読めますか? テーマは〈風雨〉です。
目次
颶風
ぐふう
(正解率 47%)強烈な風。特に熱帯低気圧や台風を指す。幕末の学者、伊藤慎蔵が訳した気象専門書「颶風新話」は、後に台風下の日本初の遭難外国船救助に利用され、多くの米国人とロシア人を救ったという。
(2016年09月05日)
選択肢と回答割合
たいふう | 40% |
ぐふう | 47% |
しっぷう | 14% |
櫛風沐雨
しっぷうもくう
(正解率 34%)風で髪をとかし、雨で体を洗うことから、風雨にさらされながら苦労するたとえに用いる。風呂に入るような余裕もない暮らしなのだろう。「荘子」からきた言葉。
(2016年09月06日)
選択肢と回答割合
しっぷうもくう | 34% |
せっぷうもくう | 60% |
くしかぜぼくう | 6% |
飛雨
ひう
(正解率 52%)風に吹き飛ばされるように降る雨。明治時代の政治家、副島種臣(そえじま・たねおみ)の書「帰雲飛雨」はまるで天気図の台風のようにぐるぐると書かれている。
(2016年09月07日)
選択肢と回答割合
しぶき | 41% |
ひう | 52% |
とびあめ | 8% |
秋出水
あきでみず
(正解率 31%)秋の台風や長雨によって起こる洪水。秋の季語。「梅雨出水」は夏の、「春出水」は春の季語だが、被害が大きいのはたいてい秋出水だ。「柵の上に腰かけ居るや秋出水」(高浜虚子)
(2016年09月08日)
選択肢と回答割合
あきいずみ | 55% |
あきでみず | 31% |
しゅうしゅっすい | 13% |
颱風
たいふう
(正解率 66%)台風の昔の表記。ただしこの表記も日本では割に新しく、台風に当たる言葉は「野分き」などとされてきた。英語のタイフーンに当てたといわれる「颱風」は大正時代に一般的に。戦後の当用漢字による書き換えで「台風」になった。
(2016年09月09日)
選択肢と回答割合
つむじかぜ | 30% |
たいふう | 66% |
だいふう | 5% |
◇結果とテーマの解説
(2016年09月18日)
この週は「風雨」でした。
その台風のかつての表記「颱風」がこの週で最も正解率が高かったのですが、それでも3人に1人が間違えたという結果でした。「かつての表記」と書きましたが、いわゆる旧字体ではありません。「台風」は当用漢字でない「颱」を同音の字によって書きかえた表記です。つまり、颱と台は別の字で、颶も別の字です。
今回質問をいただいたこともあり語源について整理しましょう。「颶風」は中国で昔、台風のように風向の旋回する風を呼び、1857年に洋学者、伊藤慎蔵が熱帯低気圧についての訳書「颶風新話」で科学的に日本に紹介しました。それより以前、颶風はアラビア人にぐるぐる回るという意味のtufanとして訳され、それが中国に「颱風」として返ってきたといいます。17世紀の中国の書物が最古の例だそうです。他方で、アラビア人を介して欧州では既に16世紀にtyphoon(タイフーン)という言葉が生まれたようです。つまり、一般的に英語のタイフーンから中国の颱風という言葉ができたといわれることが多いのですが、実はもう少し複雑で、颶風がこの言葉の意味のごとく世界的に旋回して、タイフーンと颱風に分かれたというわけです。以上、小学館「日本大百科全書」より。
「飛雨」はぐるぐるの字が印象的な書「帰雲飛雨」が台風を思わせたことから出題しました。明治の元勲、副島種臣の書――といっても知らない人が多いかもしれません。出題者も石川九楊著「書と文字は面白い」(新潮文庫)で知りました。どんな書か、興味を持たれた方はネットでも画像が見られますので検索してください。それにしても、政治家にしてこれだけの独創的な書を残す人がいたということだけでも、明治の人材の豊富さ・多様さを思わせます。副島は西郷隆盛の友人だったそうです。
「櫛風沐雨」の櫛は「くし」の訓は簡単でも音読みが難しいですね。この言葉の出典は、出題時に示した「荘子」のほか「晋書」とするものもあります。どちらが正しいかというより、中国古典が、いや中国に限らず日本の古典もそうですが、いろいろな言い伝えのミックスでできているからでしょう。
さて、全体的に正解率が低めだったこの週の中でも「秋出水」が最も読みにくいという結果になりました。漢字は簡単でもクイズなのでひねった回答に集まってしまう典型例ですが、季語として一般に知られていないことが根本の原因でしょう。
この高浜虚子の句と季語を銘記することで防災の心構えとするのはいかがでしょう。をとどしのけふの事なり秋出水