席の間の仕切りを、カタカナ語ではどう呼ぶか伺いました。
目次
「パーテーション」が6割占める
席と席の間の仕切り。カタカナ語ではどう呼びますか? |
パーティション 31.4% |
パーテーション 58.3% |
上のいずれも使う 10.2% |
「パーテーション」が6割近くを占め最多でした。英語の「partition」からすると「パーティション」となるのが普通なのですが、日本語としては「パーテーション」がより浸透しているようです。
国語辞典は「パーティション」
国語辞典で「パーテーション」を見出し語に採用しているものはほとんどありません。十数点を見た中では大辞泉(2版)が唯一でしたが、それも「パーティション」の項目に誘導するだけのカラ項目です。現代国語例解辞典(5版)は「パーティション」の項目に別表記として「パーテーション」を載せています。
一方、三省堂現代新国語辞典(6版)は「パーティション」の項目で「俗に『パーテーション』とも言う」とし、「パーテーション」は俗用であるという立場を取ります。また三省堂国語辞典(7版)はやはり「パーティション」の項目で表記揺れについて触れていますが、「あやまって、パーテーション・パーテンション」とし、「パーテーション」は誤用がもとになった表記と見なしています。
新聞・通信社の用語集では1社だけ、外来語表記の例として「パーティション」を載せているものがありました。おそらく「どちらかはっきりさせてほしい」という社内での議論があったのでしょう。「パーテーション」を載せる社はありませんでした。
なじみのない「ティション」で終わる語
このように、「正しい」表記を志向する辞書や用語集などは「パーティション」を選んでいるにもかかわらず、一般社会においては「パーテーション」がよく使われ、今回のアンケートでも多数を占めたのはどうしてでしょうか。
考えられる答えとして、私たちにとって「ーション」という語尾の方が「ィション」という形よりもなじみ深いということが言えるでしょう。「逆引き広辞苑」(1992年)を見ると、語尾が「ィション」で終わる言葉は、エディション▽オーディション▽エクスペディション▽トラディション▽コンディション――のわずか五つ。それに比べると「ーション」で終わる語はほぼ1ページにわたって100以上の言葉が挙げられています。
「ティション」「テーション」に限れば前者はゼロ、後者は22とさらに差は顕著です。もっとも広辞苑でも2008年の第6版から「パーティション」が採録されているので、今はゼロではないはずですが。
そもそも英語でも「tition」より「tation」で終わる語の方がはるかに多いため、音写した当初は「ティション」が用いられたとしても、他の語との類推から「テイション」「テーション」という形に変わっていくということは、不自然ではないのではないでしょうか。
決めかねるなら「仕切り」「間仕切り」で
辞書類が、由来である英語の音を尊重して「パーティション」を見出し語に取るというのは理解できます。一方で一種の和製英語と考えれば「パーテーション」が使われること自体を否定する理由はなく、現にいずれもが使われているのが実情と言えるでしょう。日常的にはどちらが使われても問題ないと考えます。
ただし、「パーティション」を採用している新聞社があるというのは、表記を統一することが実務上必要な場合があるためと考えられます。あえて一つを選ぶとしたら、辞書を頼りに「パーティション」とすべきでしょうか。もっともアンケートで多数を占めた「パーテーション」も否定しがたく、このように迷うのであればカタカナ語を避けて「仕切り」「間仕切り」などとするのがよいかもしれません。
(2020年06月16日)
新型コロナウイルスの流行に向けた「緊急事態宣言」は全国で解除されましたが、ウイルスへの警戒を怠るなというメッセージが出されています。
政府の専門家会議の提言では、飲食店に「間仕切りの活用」を求めるなどしており、席と席の間にアクリル板の仕切りを設けて客同士が接触しないようにする店も出ています。
さて、その仕切り。カタカナ語では「パーテーション」「パーティション」の両様が見られ、呼び方が定まっていないようです。通信販売のウェブサイトでも「パーテーション(パーティション)」とするなど、検索のキーワード対策もあってか両方の表記を載せています。
英語のつづりは「partition」。これによれば「パーティション」で決まりかとも思いますが、そうなっていないのは何か理由があるような……皆さんはどう使っているでしょうか。
(2020年05月28日)