「高い注目を集める」という言い回しについて伺いました。
目次
「高い注目」には8割が違和感
多くの人が視線を注ぐ。「高い注目を集める」という表現、どこか気になりますか? |
「高い注目」に違和感がある 60.2% |
「注目を集める」に違和感がある 11.8% |
上のいずれにも違和感がある 19.5% |
違和感はない 8.5% |
「高い注目」はおかしいと感じる人は、「いずれにも違和感」を選んだ人を含めて8割を占めました。一方、よく使われる「注目を集める」にも違和感ありという人が3割。よく使う言い回しでも立ち止まって見直す必要があるかもしれません。
「注目を集める」は混用か
「注目」は「目を向けてよく見ること。注意して見ること。関心をもって見守ること。注視」(日本国語大辞典2版)。「する」を付ければ「注目する」と動詞として使われます。多くの人から注目されることを「注目を集める」と言いますが、これに対しては他の言い回しとの混同から生まれた言葉だという見解があります。
NHK放送文化研究所のウェブコラム「ことばウラ・オモテ」の「見方を変える」という回で、「『視線を集める』『注目を浴びる』と混用されているのが『注目を集める』です。多くの人はおかしいと思わないようですが、一部に強い反対があります」と紹介されています。
辞書の用例としてはまた、似た意味を伝える言葉として「耳目を集める」「衆目を集める」のようなものがあります。もっとも、これらの言葉にしても、インターネット上のコーパス(言語資料)を見ると、あまり古い用例は見つかりません。明治以降に似たような言い回しがいくつも出るうちの一つが「注目を集める」だったのだろうと考えられます。
用例は「注目を集める」が他を圧倒
しかしこの「注目を集める」は現状として、誤りとはとても言えないほどよく使われています。2009~18年の10年間について毎日新聞の記事データベース(東京版、地域面除く)を見ると、使用例は3390件(活用形を考慮して「注目を集め」で検索、他も同様)。「視線を集める」は47件。「耳目を集める」は168件、「衆目を集める」は17件と、差は歴然としています。
多くの人が注目する対象を「注目の的」と言いますが、的に何かが集まるのは自然なこと。では何が集まるかといったときに、あえて「視線」などと言い換えることなく、そのまま「注目」を使用して問題なしとするのが、一般的な言語感覚ということになるのでしょう。国語辞典も、明鏡国語辞典や現代国語例解辞典、三省堂国語辞典(いずれも最新版)は「注目を集める」ないし「注目が集まる」を用例として採用しています。
「高い注目」は言い換えられるか
8割が違和感を示した「高い注目」の方ですが、こちらはまず、これだけ違和感を示す人が多いのであれば使用を避けるべきではないかと考えます。そのうえで、何らかの形で言い換えが可能かどうか。
「注目度」のように度合いを表す表現に直せば、「注目度が高い」「――低い」、「注目度が大きい」「――小さい」といった程度を形容する言葉につながります。もっとも、「高い注目度を集める」のような言い回しは無理。「注目度が高まっている」のような形をとります。あるいは「注目」を離れて、「関心」などと言い換える方が自然かもしれません。
程度を表す言葉はかなりの幅を持って使われており、「これで決まり」とは言いにくい場合が多いのが実情です。それでも「注目」のような動作性を示す語に「高低」は結びつきにくいとは言えるでしょう。違和感を持たれないためには、「多方面からの注目が集まる」「高い関心が寄せられる」などと、やや切り口を変えて言い回しを考える必要があるようです。
(2019年06月28日)
「高い注目を集める」というのは、一見してこなれていない言い回しだと思うのですが、どう変えるかとなると難しく感じるのではないかとも思います。
まず「注目」は高かったり低かったりするものか。かといって「大きな注目」「強い注目」などもしっくりきません。「注目」を度合いにして「注目度」とすれば「注目度が高い」のように言うことができそうですが、文意が変わるようにも思われます。
一方で、「注目を集める」は「注目を浴びる」と「視線を集める」の混用だとする見解があります。注意をもって視線を向けることが「注目」ですから、「視線を集める」の方が素直な言葉遣いだろうとは言えます。ただし、現在では複数の辞書が「注目を集める」という用例を掲載していますから、言い回しとしては普及したものと言えそうです。
出題者としては「注目を集める」は気になりませんが、「高い注目」は何とかしたいところ。「大いに注目を集める」などの方が良いでしょうか。悩みます。
(2019年06月10日)