読めますか? テーマは〈秋の句〉です。
目次
鹿火屋
かびや
(正解率 25%)「かひや」とも。農作物を荒らしに来る動物を追い払うため、火をたいて警戒する番人の小屋。「淋(さび)しさにまた銅鑼(どら)うつや鹿火屋守」(原石鼎=はら・せきてい)。原は結社「鹿火屋」を主宰した。
(2017年11月06日)
選択肢と回答割合
しかびや | 13% |
かびや | 25% |
かがや | 63% |
添水
そうず
(正解率 44%)鳥獣を脅すための仕掛けで「ししおどし」の一つ。竹筒をシーソーのようにして水を流し、その重みと反動で石などに筒の底が当たって音が鳴る。京都・詩仙堂の添水は名高い。「詩仙堂花なき庭の添水かな」(貞永金市)
(2017年11月08日)
選択肢と回答割合
てんすい | 42% |
そうず | 44% |
そすい | 14% |
穭田
ひつじだ
(正解率 14%)「ひつじた」とも。刈り取った後に再生した稲が一面に生えている田んぼ。穭の字は櫓(やぐら)と似ているので注意したい。「穭田に一羽下りたる雀かな」(内田百閒)
(2017年11月10日)
選択肢と回答割合
やぐらだ | 67% |
ひつじだ | 14% |
みのりだ | 20% |
◇結果とテーマの解説
(2017年11月19日)
この週のテーマは「秋の句」でした。もう暦の上では冬ですけれど。
by +-
「鹿火屋」は現代では失われた風景の一部です。新潮文庫の「新改訂版 俳諧歳時記」の解説を引きましょう。
山田の辺りに小屋を作り、火を燻(くすぶ)らせて煙をたて、猪や鹿が田畑を荒しに来るのを防ぐのである。古来詩歌にその寂しい趣を詠まれている。人里はなれた山中の鹿火屋の煙は旅情をそそったものらしい。銅鑼(どら)を鳴らして猪や鹿を防ぐこともあるが、夕霧のたちこめる山道に、その音はどんなにか寂しく聞こえたことであろう。
現代では銅鑼の代わりに、猟銃やロケット花火、そして市歌でサルを追い払う市があるそうです。ドローンも使うということで、昔の詩情はありませんが、動物対策は文人の旅情とは関係なく死活問題なのでしょう。
「添水」ももともとは鳥獣対策でした。「ししおどし」と同じ意味で用いられることもありますが、これは本来、動物よけの物の総称。かかし、鳴子も含みます。
しかし今は添水より、ししおどしの方が「ああ、あの日本庭園などにある音の鳴るやつか」という理解度があるのではないでしょうか。今回の読みの結果もそれを示していると思いました。「ばったんこ」という別称もありますが、これもあまり知られていないかもしれません。
「穭田」の正解率も、まれにみる低さとなりました。この手の3択クイズは、全くわからなくても33%は当たる確率があります。それより低くなるのはよほど紛らわしい選択肢があるということで、今回は「やぐらだ」がそれでした。
櫓と穭という字の酷似に加え、「ひつじ」という季語が知られていないことがあるのでしょう。ちなみに毎日新聞のデータベースで俳句を検索すると「櫓(ひつじ)」という残念な誤字が残っていました。
知らなくても困る人は少ないでしょうが、新聞には俳句の投稿欄など、季語が出る機会が少なくありませんので、担当者は正確な知識が求められます。
では「秋の句」のテーマに沿い、出題時に引用したものとは別の句を紹介します。
夕闇の風しづまるや鹿火屋守 村上咲
ぎいと鳴る三つの添水の遅速かな 河東碧梧桐
ひつぢ田にもみぢちりかかゝるゆふ日哉 蕪村