
「ひとごと」に対する「自分ごと」という表現について伺いました。
目次
今なお「おかしい」が半数占める
| 「ひとごと」に対して「自分ごと」という言葉を使いますか? |
| 使う 27% |
| 使わないが、おかしくはない 20.5% |
| 使わない。おかしな言い方だと思う 52.5% |
近年よく見るようになった「自分ごと」という言い方ですが、アンケートではいまだに「おかしな言い方だ」と感じる人が5割を占めました。とはいえ最近は新聞記事に登場する回数も増えており、「使うな」とも言いにくくなってきているのが実情です。
使用例は右肩上がり
今回の質問は2019年の質問の再質問でした。7年前は「おかしい」と考える人が7割を占めており、それに比べれば許容する人は増えてきていますが、今でも好まない人は少なくないことが見て取れます。
当時の質問時の解説では、以下のように記しています。
毎日新聞(東京本社版)で「自分事」「自分ごと」を検索してみると、2013年までは年に1件あるかないかだったのが、14年以降は年に5件程度。それほど多くはありませんが、増加傾向にはあるようです。
「増加傾向」と記していますがその後どうなったかというと、使用例は右肩上がりで増えています。2018年はまだ9件でしたが、19年には15件、20年には33件……と増え続け、24年には49件、25年には56件となっています(毎日新聞東京本紙)。
毎日新聞用語集は2025年版で「自分ごと」について、「誤りやすい表現・慣用語句」の欄で以下のように案内しています。
自分ごと→「他人事」を「たにんごと」と読んだところから対義語として使われるが、地の文では「自分の事」「我が事」などとする。使わざるを得ない場合も、ひげカッコやかぎカッコでくくるなどする

毎日新聞用語集より
要するに、記者は使用を控えるように、ということです。「使わざるを得ない場合」というのは発言などに出てきたもので表現を変えにくい場合を想定していますが、このように案内してもなお24年より増加しているということで、記者にとってもそれほど違和感のない言葉になっているようです。
毎日新聞の例だけじゃ当てにならん、という可能性もありますので、共同通信の記事データベースでも検索してみましょう。同様に「自分ごと」「自分事」の両方で2013年から検索したところ、15年までは各年ゼロ、16年の2件から増え始め、24年には97件、25年には91件と、やはりほぼ右肩上がりに増え続けています=グラフ参照。念のため付け加えると、共同通信の記者ハンドブック(14版、2022年)には「自分ごと」について注意を促す記載はありません。その分一層、以前は使われなかった言葉が急速に広まっていることがわかるのではないかと思います。

(出題者作成)
国語辞典も採録
19年の質問時には「辞書には見つからず、確立された言葉とは言い難いようです」との記述もありましたが、この7年の間には採録する辞書も出てきています。言わずもがなの三省堂国語辞典(8版、2022年発行)に加え、三省堂現代新国語辞典(7版、2024年発行)にも記載があります。いずれも新語を取り入れるのに積極的な辞書ですが、新語とも俗語とも注記せず、さらりと説明しています。
じぶんごと[自分(事)] ➀自分に関係する、さしせまったこと。わがこと。「自分ごととしてとらえる」(↔他人(たにん)ごと、人ごと)②わたくしごと。「しょせん自分ごとだ」 (三省堂国語辞典8版、親項目「じぶん」の子項目)
じぶんごと【自分事】 [人ごと、他人事でなく]わが事。「社会の問題を自分事として捉える」 (三省堂現代新国語辞典)
三省堂国語辞典の方は「わたくしごと」との意味も載せています。こちらは今でも使用されることがあるようですが、「ひとごと」の対義語としての説明が主になっています。特徴的なのは、いずれの辞書も「自分ごと」の対になるものとして「ひとごと」「たにんごと」をそれぞれ記載していることでしょう。元々「ひとごと」と読んだ「他人ごと」については以前アンケートでも取り上げましたが、これを「たにんごと」として独立した語と考えるなら、「自分ごと」も一つの語として認めるのは自然な成り行きかもしれません。
それでも半数は違和感強し
ここまで「自分ごと」の使用例が増えており、言葉として認められるようになってきたことを説明してきました。ただし、今回のアンケートでは、それでも半数の人が「おかしな言い方だ」を選んで抵抗感を示しています。
「現代用語の基礎知識」では2015年版で「自分事」が姿を見せます。その項目では
従来の「私事」の使い方とは微妙に違い「『他人事(ひとごと)ではないこと』といったニュアンスで使われているようだ。しかし「自分のこととして」ではダメなのか? 一語にまとめてしまうことで「商品化された言葉」のように“私”は感じてしまう。
と筆者の違和感がつづられていますが、19年のアンケートの際に紹介したように「自分ごと」は元々ビジネス書などで使われがちな表現でもありました。何というかキャッチフレーズ的・自己啓発的なニュアンスを帯びた言葉という雰囲気はあり、そうしたものに違和感があるかどうかが、言葉に対する受け止め方にそのまま反映するのかもしれません。
実態から言うと、使用の流れを押しとどめるのは既に無理だろうと感じていますが、この言葉に対して肯定的に感じない人も少なくない、ということは踏まえておくべきでしょう。ここ10年あまりで急速に広がった言葉であることを前提として、その流れに乗っかるか、いま少し様子を見るかは考えた方がよいだろうと思います。
(2026年04月20日)
2019年3月に伺った質問の再質問です。前回は7割の人が三つ目の選択肢「使わない。おかしな言い方だと思う」を選びました。それから丸7年が経過しましたが、同じ質問・選択肢で改めて聞いてみたいと思います。
以前質問した際にはこのように書きました。「毎日新聞(東京本社版)で『自分事』『自分ごと』を検索してみると、2013年までは年に1件あるかないかだったのが、14年以降は年に5件程度。それほど多くはありませんが、増加傾向にはあるようです」。それが24年には49件、25年には56件となっています。はっきり増加していると言ってよいでしょう。
毎日新聞用語集(25年版)は「地の文では『自分の事』『我が事』などとする」として、記者自身の言葉としては使わないように案内しています。実際、地の文で使われることは多くありませんが、それでも記事に出ることが多いというのは、発言の中などで「自分事」を使う人が増えていることの証拠とも言えます。今回の結果はどうなるでしょうか。
(2026年04月06日)
