
数字につく「弱」の受け取り方について伺いました。
目次
7人に1人は「少し多い」
| 会場前には「100人弱」が列を作った――並んだのは何人ぐらい? |
| 100人に少し足りない、90人台ぐらい 83.6% |
| 100人より少し多い、105人ぐらいまで 14.3% |
| 上二つのいずれか分からない 2.1% |
「100人弱」という場合、その数は100人より多いか少ないか。辞書の説明では100人に少し足りない数について使うとされ、アンケートでも多くの人はそのように回答しました。一方、7人に1人は「100人より少し多い」と答え、人によっては解釈が正反対になりかねないことが示されています。
「正解」は「少し足りない」だが…
三省堂国語辞典8版の「弱」の項目には、接尾辞としての使い方で「それよりやや少ないこと」という説明があります。「それ」というのは直前の数を指しますから、「100人弱」であれば「100人よりやや少ないこと」という意味です。対義語は「強」。同様に「それよりやや多いこと」という説明が載っています。

というわけで一般的に「正解」と言うべき理解の仕方は一つ目の選択肢、「100人に少し足りない、90人台ぐらい」となります……ということなのですが、現に「100人より少し多い」と受け取る人がいることも事実というのが、このアンケートの結果にも表れています。
年代により受け取り方に差
実はこのような「弱」の使い方については、NHK放送文化研究所による、より詳しい調査があります(「放送 研究と調査」2025年1-2月号 “ご連絡くださった件,把握いたしました” 〜2024年「日本語のゆれに関する調査」から(1)〜)。
この調査では「1000円弱」と「1000円強」を組み合わせた形で二つの理解の仕方を提示しています。
a.「1000円弱」は1000円を少し超える金額・「1000円強」は1000円よりもかなり高い金額
b.「1000円弱」は1000円よりも安い金額・「1000円強」は1000円を超える金額
「bが伝統的な解釈・用法であり,aは新興のものである」としつつ、aとbでどちらかだけが正しいか、あるいは両方とも正しいか誤っているかを尋ねています。
「弱」がついた場合に、そこに記された数字より大きくなると受け取るaだけを正しいとする人は全体の12%で、今回のアンケートとも大きな差はありませんが、年代別で見ると20代では19%、30代では21%と、比較的若い年代で「新興の解釈」が支持される傾向があるとこの調査は伝えています。理解の仕方が変化しつつある可能性もありそうです。
誤解を避けるためには
「100人弱」という言い回しを目にした時に、90人台なのか100人超なのかで受け取り方が分かれるというのは困ったことです。あるいは逆に、「100人弱」と書いた書き手が90人台を意図していたのか、それとも100人超と見なしていたのか分からないという事態も起きかねません。
もちろん多数派が従来の用法にのっとっていることは明らかです。基本的には「100人弱」は「100人より少ない」として理解しつつ、自分で使うという場合には、できるなら具体的な数字を示すなどして、誤解を招かないように工夫するのがよいと考えます。
(2025年10月27日)
「弱」は「〈数を表す名詞に付いて〉端数を切り上げたことを表す」(明鏡国語辞典)。つまり「100人弱」なら、切り上げて100人になるということですから、100人に少し足りない数、90人台ぐらいかと見当をつけることになります。反対は「強」で「端数を切り捨てたことを表す」(同)。「100人強」なら「100人ちょっと」ということです。
しかし最近、今回のケースだと「100人弱」について、「100人と少し」とする理解の仕方があるといいます。「100人ちょっと」や「100人あまり」のように、「100人弱」も「100人+弱」と受け止められるようです。それなら「100人強」は?というと「100人とたくさん」とのこと。「弱」が少しなら「強」はたくさん――扇風機の風の強さとか、何らかのイメージが働いていそうです。
しかし受け手によって、100人を超えているか否かの理解が正反対になるのでは困ってしまう場面もありそうです。このアンケート欄でも「3割弱」のような使い方はしばしばするのですが、これも3割を超えているものとして受け取る人が多いようなら、今後は書き方を考えなければならないでしょう。今回の質問に皆さんがどう答えるか気になります。
(2025年10月13日)
