読めますか? テーマは〈原発関連の要注意地名〉です。
目次
大飯郡
おおいぐん
(正解率 88%)福井県。関西電力大飯原発があるのは「大飯郡おおい町」。おおい町は2006年、大飯町と名田庄村が合併して誕生した。毎日新聞など新聞は普通、郡名を略す。なお「大井町」は神奈川県の自治体名など全国的にある。
(2012年05月07日)
選択肢と回答割合
おおいぐん | 88% |
おおいいぐん | 10% |
おおばんぐん | 2% |
原町区大甕
はらまちくおおみか
(正解率 38%)福島県南相馬市の地名。同市の一部は原発事故で警戒区域に指定されていたが、先日解除され、大甕地区の検問ゲートも解かれた。昨年末に復旧したJR常磐線駅名は「原ノ町駅」。なおJR常磐線「大甕駅」の所在地は茨城県日立市大みか町で、漢字と平仮名の交ぜ書き表記である。
(2012年05月08日)
選択肢と回答割合
はらのまちくおおかみ | 12% |
はらまちくおおがめ | 50% |
はらまちくおおみか | 38% |
小川原駅
こがわらえき
(正解率 16%)青森県にある青い森鉄道の駅名。近くに小川原湖があるが、その読みは「おがわらこ」。核燃料サイクル施設関連で出てくる「むつ小川原」という広域地名を指すときも「おがわら」。駅名の読みが違うのはかつて小川原湖が「小川原(こがわら)沼」と呼ばれていたことに基づく。
(2012年05月09日)
選択肢と回答割合
おがわはらえき | 17% |
おがわらえき | 66% |
こがわらえき | 16% |
羽咋郡志賀町
はくいぐんしかまち
(正解率 66%)石川県の郡・町名。北陸電力志賀原発がある。志賀は全国的にある地名。滋賀県にある駅は「志賀(しが)駅」と濁る。咋の字は「かむ」「くわえる」「大声で叫ぶ」という意味。「羽昨」と間違えられることもある。
(2012年05月10日)
選択肢と回答割合
うぐいぐんしかまち | 13% |
はくいぐんしかまち | 66% |
はさぐんしがまち | 21% |
牡鹿郡女川町
おしかぐんおながわちょう
(正解率 41%)宮城県。牡鹿半島に東北電力女川原発がある。「おが」と読むと、なまはげで有名な秋田県の男鹿市、男鹿半島のことになる。女川の地名の由来は、11世紀の前九年の役で安倍貞任が婦女子を隠したことからという。
(2012年05月11日)
選択肢と回答割合
おがぐんめがわまち | 7% |
おがぐんおながわちょう | 52% |
おしかぐんおながわちょう | 41% |
◇結果とテーマの解説
(2012年05月20日)
この週は5月5日の「全原発停止」のニュースを受けたものです。漢字の読みのクイズでは福島第1原発事故の起こる前にも、原発の固有名詞で出題したことがありました。「柏崎刈羽原発」「伊方原発」「川内原発」などです。その時だったか、同僚が「原発の名前って難読が多いですね」とつぶやいた記憶があります。それこそが、原発を過疎の地にしか建てられず私たちがあまり関心を持ってこなかったことを端的に表すものだった、と今にして痛感します。さて今回は、原発関連の固有名詞の「ねじれ」ともいうべき点に注目して選びました。前述の同僚の言に倣えば「原発関連には間違えやすい固有名詞が多い」ともいえます。漢字クイズには挙げておりませんが、佐賀県の「玄海原発」は「海」で「玄界灘」は「界」、青森県の「東通原発」は東京電力と東北電力が敷地を所有し現在定期点検中なのは東北電力で建設が中断されたのは東京電力の方――など、表記や事実関係のややこしさを挙げると枚挙にいとまがありません。
校閲にとって、いやマスコミにとって固有名詞の間違いはいうまでもなくあってはならないものです。郵便なら「石川県羽昨郡」と誤記してもちゃんと届くでしょうが、新聞では「訂正」が必至。かくいう出題者も、かつて見出しで「羽昨」の間違いに気付かず訂正記事を出したという苦い記憶があります。「羽昨」の誤字を入力した編集者は、「はくい」と打ちさえすれば正しく変換してくれるのにその読みを知らず、一字一字打って間違えたのでしょう。正しい読みを知らないということは、アナウンサーほど罪が意識されないかもしれませんが、誤字を生む一因ともなるのです。
そういう意味で今回の「牡鹿郡女川町」の正解率41%は最も注意を促す数字といえるでしょう。新聞では郡名は基本的に書かないのですが「牡鹿半島」などの地名としては何度も登場しています。「おがはんとう」と打つと「男鹿半島」と変換し秋田県のことになってしまいます。ぜひ覚えておいてほしいと思いました。
最後に、以前校閲の同僚だった人の話を少し。彼は校閲に異動になる前は原発の記事をよく書いていたのですが、電力会社のチェックが厳しくて、少しでも発表と違うことを書くとすぐ指摘されたそうです。もちろんマスコミとして間違いは許されません。ただ、そういうチェックもいいが、電力会社自身のチェックはどうなっていたのだろう――と、事故が起こってしまってからの後付けですが、思わずにはいられません。
(Photo by Nekosuki600)