すぐにできる簡単レシピ「ソッコーメニュー」を漢字で表記するならどの字がふさわしいかを伺いました。
目次
「速攻」が約半数
すぐにできる簡単レシピ「ソッコーメニュー」の「ソッコー」を漢字で書くなら? |
「速攻」を使う 51.3% |
「即行」を使う 20.3% |
その他の漢字(「速効」「即効」など)を使う 8.1% |
漢字はなじまないのでカタカナを使う 20.3% |
約半数の人が「速攻」がふさわしいと答えました。この用法を載せている辞書の多くが「速攻」の項に俗語として「すぐに行うこと」「すばやくすること」といった説明を掲載しており、辞書としてもこの表記が一応の「正解」と言えそうです。
ところが「即行」が2割、「その他の漢字」が1割弱、「漢字はなじまないのでカタカナを使う」が2割。裏を返せば、カタカナ派も含めるともう半数の人は「速攻」を支持しない結果となりました。
辞書の説明は「速攻」が多数派
俗語としての意味を載せている辞書(いずれも最新版)の記述を抜粋してみます。
<「速攻」のみ>
▽明鏡国語辞典:「速攻」②[俗]すぐに行うこと
▽大辞林:「速攻」②(多く、「速攻で」の形で)すぐに。即座に。急いで。[近年の話し言葉でみられる用法]<「速攻」を主に別表記も提示>
▽三省堂現代新国語辞典:③[俗に]すばやくすること[「即行」とも書かれる]
▽三省堂国語辞典:②[俗]すばやくすること。ソッコー。表記:②は「即行・即効・速効」などとも
▽デジタル大辞泉:「速攻」②<俗語。「即行」「ソッコー」とも書き、副詞的に用いる>すぐさま。ただちに<「即行」のみ>
▽新明解国語辞典:「即行」[近年は副詞的に用いる向きもある]
「速攻」が多数派ですが、「即行」など別表記を付記する辞書も。新明解国語辞典は「即行」の副詞的用法だとの立場です。
スポーツからの転用か
三省堂国語辞典は2008年発刊の6版、明鏡国語辞典は2010年発刊の2版、大辞林は2019年発刊の4版から「速攻」の項目に俗語としての説明を載せるようになっており、この使い方が広まった当初に想定されていた表記はやはり「速攻」だったようです。
元来「速攻」は主にスポーツにおいて使われる用語で、「競技や戦で、相手をすばやくせめたてること」(広辞苑)。サッカーやバスケットボールなどにおいて相手の守りが固まりきっていない間にすばやく攻め込む戦法を指し、カウンター攻撃などとも言われます。バレーボールのクイックを思い浮かべる人もいるでしょう。
ここから「攻」のニュアンスが抜け落ち「すぐに」「すばやく」といった側面が強調されるようになった、あるいはスポーツの「速攻」のように鮮やかに「すばやくする」といった意味で使われるようになったのが俗語の「速攻」というところでしょうか。
語源重視の「速攻」、意味重視の「即行」?
アンケートでは、2割の人が「即行」と回答し、「速効」「即効」など別の字を使うとの回答も合わせると3割弱が「速攻」以外の漢字がふさわしいと答えました。「速攻」以外の意見も無視できない割合です。
質問時にも触れましたが、筆者は「攻める」ニュアンスを伴う「速攻メニュー」にためらいを覚えて「即座に行う」「すぐに行う」からの連想で「即行」を思い浮かべました。意味の面から考えると「即行」や「はやく/すぐに効果が出る」という「速効」「即効」を使いたくなる場面もあるかもしれません。「ソッコー」に完全にしっくりくる表記は見つからないようにも思いますが、それでも意味を重視した場合に「速攻」以外の表記が候補に挙がる場合はありそうです。
三省堂国語辞典、三省堂現代新国語辞典はいずれも、最初は「速攻」に俗語としての意味を載せ、後の改訂で「即行」などの別表記を示す文言を加えています。これは、もともと想定されていた表記は「速攻」だったものの、他の表記が使われる場面が増えてきたことを反映しているのかもしれません。

毎日新聞デジタルでも「即行“避難”」との見出しが使われていた。
迷ったら「速攻」が無難だが
ここからは想像ですが、この「ソッコー」の使い方は、どの辞書も「俗語」などと断っている通り、くだけた会話の中で使われる話し言葉。そもそも漢字表記を意識せず使われることも多かったのではないでしょうか。2割の人が、漢字の選択肢がある中で「漢字はなじまないのでカタカナを使う」を選択したのも、「話し言葉だ」という意識の表れなのかもしれません。
そして交流サイト(SNS)など文字によるコミュニケーションが増えていく中で人々が思い思いの表記を当てはめるようになり、その結果さまざまな表記が見られるようになってきたという流れは自然に思えます。
多くの辞書が「速攻」を主軸にしているという点からも、迷ったら「速攻」が無難だとは言えそうです。ただ、別表記で書かれているものを必ず「速攻」とすべし、とまでは言い切れないという結果だったのではないでしょうか。さまざまな表記が認められるというのも、俗語ならではの面白さです。
もちろん、あくまで俗語なので、正式な場や書き言葉では「即刻」などに言い換えることを検討してもよいでしょう。今回の例の「ソッコーメニュー」であれば、「手間がかからない」「すぐできる」という意味で「即席メニュー」のような書き換えもありうるかもしれません。
(2025年04月14日)
「すばやくする」「すぐに行う」といった意味合いで使われる俗語「ソッコー」。なんとなくカタカナで書くイメージを持っていましたが、先日料理の原稿で「すぐできるレシピ」というニュアンスで「速攻メニュー」という表記が使われているのを見かけました。
出題者にとって「速攻」はどうしてもバスケットボールなどスポーツの印象が強く、「攻める」ニュアンスのない「速攻メニュー」には戸惑いました。「即行」の表記が一瞬浮かんだのですが、明鏡国語辞典が「速攻」の項で「[俗]すぐに行うこと」、三省堂現代新国語辞典も同様に「[俗に]すばやくすること」と説明しており、漢字表記としては「速攻」が一応の正解なのだと受け止めました。
ところがSNSなどでは「即行」「即効」「速効」表記もそれぞれ多く見つかります。そうした流れを受けてでしょうか、三省堂国語辞典は他の辞書と同じように「速攻」の項目で「[俗]すばやくすること」と説明しつつ、第8版では新たに「即行・即効・速効なども」と別表記があるという記述を加えています。
俗語としつつも取り上げる辞書が増えてきている中、皆さんはどの表記がしっくりくるのか、うかがってみたいと思いました。
(2025年03月31日)