毎年、お正月になり、はがきであれメールであれ、誰かから新年を祝う言葉が送られてくると、たいへんうれしい気持ちになります。
その中によく見かけるあいさつとして「新年明けましておめでとう」というものがありますが、これは「新年」と「明けまして」のどちらかが余分である、と考える方もいるようです。
「明ける」という言葉は、「一定の期間(の拘束された状態)が終わって、新しい状態が展開する」(新明解国語辞典第7版)ことを表すのだから、「(旧年が)明けまして(新年となり)おめでとう」とすべきであるのに、「新年(が)明けまして」では「新年」が主語となりおかしい、というのがその理由です。
また、「明ける」自体に「年が改まる」(大辞泉第2版)という意味があるため、「新年明けまして」では意味が重複しているという解釈もあります。
一方で、「新年明けましておめでとう」は、すでに広く一般的に使われているあいさつであるため、もはや誤りとはいえない、という指摘もあるようです。
また、辞書によっては、「水が沸く」「お湯が沸く」の両方が使われるように、「明ける」も「古いものと新しいものの両方を主語にとる」(明鏡国語辞典第2版)と説明するものもありますから、「新年明けまして」は、一概に間違いであるとも言い切れません。
明鏡国語辞典第2版(抜粋)
こうして調べてみると、さまざまな説があり、私自身、来年の年賀状はどう書くべきか、すっかり困ってしまいました。
これまでは「新年明けまして」を一般的なあいさつとして使ってきましたし、「新年」と「明ける」が重複している、と考えても、新しい年を迎えられた「おめでたさを重ねる」おせちの詰められた重箱のような感じがして好きなのですが……。
私にとっては、今度の年賀状が校閲記者になってから出す初めての年賀状です。これまで通り「新年明けましておめでとう」と書いて、「『新年明けまして』は誤りである」と考える友人や親類から「校閲記者になったのに、新年早々間違った日本語を使うなんて大丈夫だろうか」と心配されるのも困ります。
今回は「新年」を付けず、「明けましておめでとう」と書いておこうかと思います。
【山田優梨】