「ワースト2位」という表現についてどう思うか伺いました。
目次
「おかしくない」が多数派
下から2番目を「ワースト2位」と呼ぶのはおかしい? |
おかしい。「ワースト=最低」で2位はない 35.8% |
おかしくない。下から2番目として通じる 64.2% |
「おかしくない」と感じる人が3分の2近くを占め、大勢は「ワースト2位」を認める方向にあるようです。毎日新聞(東京版、地域面除く)で「ワースト」に順位を合わせた「ワースト1位」「~2位」「~3位」のいずれかが出てきた記事の数は、1990年代に20件、2000年代99件、10年代89件と、今世紀になってからの使用が目立ちます。比較的新しい形ではありますが、これだけ使用が広まっている以上、簡単には否定できない言い回しだと言えます。
マスコミ各社は「問題ない」「使っている」
日本新聞協会では月に1度程度、加盟各社(新聞・通信・放送)の用語担当者が集まって意見を交わす用語懇談会を、東京と大阪で開いています。今年1月の東京の集まりで「ワースト1位(同2位、同3位)」という表現が話題になりました。毎日新聞の担当者のリポートによると、問いかけたのはテレビ局。地方の原稿で「ワースト2位」とする原稿が時々出稿されるが、「違和感がある」という問い合わせを年に幾度か受ける、という話でした。
それに対する各社の反応は「問題ない」「使っている」「決まりはない」というものばかり。間違いだから直すべきだ、という意見は出ませんでした。既に日ごろから少なくない数の使用例を見ているため、あえて直すという議論にはならないのだと思います。
「悪い」順位を分かりやすく伝える
実際、「悪い方から何番目か」を表すのに「ワースト△位」というのは便利な言い回しです。上に挙げたのは、人口当たりの殺人事件数を取り上げた記事。件数が多い方が1位なので、この場合エルサルバドルは単に「世界1位」としてもよいのかもしれませんが、最悪であるということを明確にするために「ワースト1位」と書くことには意味があると考えます。以下「同2位」「同10位」も自然におさまっていると思うのですが、いかがでしょう。
英語では最善に次ぐものを「second-best」と言うように、最悪に次ぐものを「second-worst」と言う場合もあるようです。インターネットで見られる現代アメリカ英語のコーパス(データベース化した言語資料)で「second-worst」を検索すると、1990年から2017年にかけて112件の用例がヒットします。second-bestの496件に比べれば少ないですが、実際に使用されていることは間違いありません。「2番目に最悪」という意味の「ワースト2位」も、表現としては「あり」でよいのではないでしょうか。
(2018年12月11日)
某日の社内の会議でやり玉に挙げられたのがこの表現。「ワーストは最上級表現なのだから、ワースト2位は間違いだ」と。その場に居合わせた校閲の部長、本来は間違いだろうと述べつつも、相当広まっていて直しづらい……とちょっとモゴモゴ。「間違い」とバッサリ斬るのも実態を考えるとやりづらい、と煮え切らない話になりました。
「ワースト2位」はよく見かける表現です。毎日新聞でも、各本社版や地方版を合わせると、記事データベース収録の範囲内で1200件以上の使用例が確認できます。「間違い」と決めつけるには、あまりに使用頻度が高いと言えるでしょう。
出題者としては、「2番目にベスト」という意味の「second-best」があるのだから「second-worst」もありそうだし、それなら「ワースト2位」だって無理とは言えないのでは、という感想を持ちました。実際にネットニュースなどの英語では「second-worst」も使われています。「ベスト2位」とはあまり言いませんが、それは単に「2位」で用が済むからで、下から2位を「ワースト2位」と呼ぶのを妨げる事情とは言えないでしょう。
皆さんからの回答がどちらかの選択肢に集まったなら、モヤモヤした回答をした部長の胸中もスッキリするかもしれません。モヤモヤの解消を期待するような質問が2度続いて恐縮ですが、結果はいかがなりますでしょうか。
(2018年11月22日)