「ヤフーBB」「スカイマーク」「ほっともっと」。この三つに共通するものが思い浮かびますか? 答えは三つとも同じ野球場にその名前が付けられたこと。元々は「グリーンスタジアム神戸」だった球場名が2003年に「ヤフーBBスタジアム」となり、05年には「スカイマークスタジアム」と変わり、11年からは「ほっともっとフィールド神戸」となっています。
次々に球場名が変わったのは、野球場やサッカー場、体育館などの公共施設の命名権を自治体などが企業に売却し、その代わりにお金をもらうネーミングライツ(施設命名権)という広告ビジネスのためです。メジャーリーグなど米国のプロスポーツの本拠施設で成功したことから日本でも導入され、03年にサッカー場の「東京スタジアム」が「味の素スタジアム」と命名されたのを皮切りに、各地の野球場やサッカー場で導入され名称が変更されました。今ではスポーツ施設だけでなく、文化施設や公園、果ては公衆便所にまで導入されています。
このネーミングライツは校閲記者には悩ましい制度です。日本では2~5年契約が多いため、「ほっともっとフィールド神戸」のように、数年ごとに施設の名称が変更されるものも少なくありません。「ヤフーBBスタジアム」と「ヤフードーム(旧福岡ドーム、現ヤフオクドーム)」のように、同じ企業が違う球場の命名権を得たため、同じ略称が年によって違う球場を指すようになってしまったものもあります。また、新潟県は東北電力の営業エリアなのですが、東北地方ではない新潟市にあるのに「東北電力スタジアム」という、引っ掛け問題のような名称の競技場もあります(来年からは「デンカスタジアム」になるそうですが)。このようにネーミングライツ導入によって校閲作業で注意すべきことがいろいろと増えてしまいました。
日本では「味の素スタジアム」のように契約を更新し続けている例もありますが、多くの施設では数年ごとに名称が変更されています。新たな契約ができずに契約料を値下げして再募集する施設や、元の名称に戻ってしまう施設もあります。短い年数で名称を次々と変更するよりも長期にわたって契約するほうが広告効果も高く、地域住民やチームのファンのためにもなると思います。実際、ネーミングライツの本家、米国では20~30年の長期契約が主流だそうです。日本でも長期にわたるネーミングライツビジネスが定着するように願いながら、今日も一つ一つ確認しています。
【新野信】