先日、日本新聞労働組合連合(新聞労連)の若手記者研修会があり、講師役として参加しました。お話ししたテーマは「校閲記者からみた記事の書き方」。新聞校閲についての説明から始め、わが毎日新聞校閲部が出版している「校閲記者の目」でも取り上げているような「誤り」の事例紹介、そして短文やダミー紙面(実際の紙面に間違いを組み込んだもの)の校閲体験、質疑応答と進めました。
参加者の多くが現役の新聞記者ということもあり、記事を書く上での注意点も含めてお伝えしました。校閲体験ではたくさんの鋭いご指摘をいただき、こちらとしても大変勉強になりました。数回にわけて、当日の内容の一部をご紹介します。
目次
読むよりも調べている?
まずは、私たち新聞校閲が普段どんな仕事をしているのかを説明しました。校閲と聞いたら「誤字・脱字を直す仕事」と思われる方が多いのではないでしょうか。
確かに誤字・脱字の修正は基本です。それに加えて、内容が正しいかを精査する作業もしています。文字の誤りを正し、内容を確認する。それを合わせて「校閲」というわけです。内容確認ではインターネットなどを駆使して、触れられている情報は正しいか、固有名詞や日付に誤りはないかなど、調べられるものは全て調べています。
入社するまでは、校閲はひたすら文字を読んでいるというイメージだったのですが、実はパソコンの画面を見ている時間の方が多いかもしれないというのが実態で驚きました。
優先順位をつけて一つずつ
また、新聞には降版時間というデッドラインがあるため、新聞校閲の作業も日々時間との闘いです。ドラマにもなった「校閲ガール」のように、現地に旅をして確かめるといった余裕はもちろんありません(もっとも実際の書籍の校閲もそんな余裕はないはずですが)。
ニュースが刻一刻と動いていく中で全てを完璧に読み終えるというのは不可能なので、優先順位をつけながら一つずつ誤りを防いでいきます。
複数の目を通して校了
毎日新聞の校閲は主に「初校」と「大刷り校閲」という二つの工程に分かれています。政治面、経済面、運動面など各面にその日の担当者を配置し、その「面担」が自分の面に載る原稿が出稿されたらまず読みます。これを初校といいます。上で触れたように、初校はただ読むだけでなく、くまなく調べながら読み進めます。
ただ、いくら「精読」したとしても、1人の目だとどうしても誤りを見逃すことがあるので、面担者数人に対してデスクかキャップ1人を配置しています。デスク・キャップがもう一度読む(=再校する)ことによって複数の目を通し、ダブルチェックをしているのです。
初校・再校を終えたら、直しを入れて原稿をOK状態にします(=校了)。原則として校了をすると、原稿が整理記者の端末に送られ、整理記者が紙面に組めるようになります。
組まれてからも原稿は出る
降版時間が近くなると、整理記者が実際に組んだ紙面を新聞紙大の紙(=大刷り)で校閲します。これを大刷り校閲といいます。①見出しや写真説明と記事の整合性がとれているか②紙面のスペース上記事を短くした場合、文のつながりがおかしくなっていないか、見出し部分が消えていないか――などをチェックします。
締め切り時間まで後は大刷り校閲に集中したいところですが、ほとんどの場合はまだ原稿がそろっておらず、紙面に空白があります(時にはまだ真っ白ということも)。それゆえ、大刷り校閲とこれから出稿される原稿の初校を同時並行でこなしていく必要があり、非常に忙しい時間帯になります。
またご存じの方も多いかと思いますが、新聞にはいくつかの版があり、お住まいの地域・場所によって届く版が異なります。版ごとに新しい記事や替え原稿、レイアウトの変更があるので、降版ごとに初校と大刷り校閲を繰り返すことになります。
【佐原慶】