「ダイエット」という言葉の使い方について伺いました。
目次
過半数は食事以外の「ダイエット」認める
「ダイエット」という言葉、どんな意味で使いますか? |
何らかの目的のために、食事を制限すること 22.1% |
特に、食事を制限して痩せる・痩せようとすること 23% |
食事制限に限らず、何らかの手段で痩せる・痩せようとすること 54.9% |
「ダイエット」という言葉については「何らかの手段で痩せる・痩せようとすること」とした人が過半数を占めました。食事を制限するという意味においても、特に痩せることを目的と考える人が多く、この言葉はもっぱら痩身(そうしん)に結びつけられていることが分かります。
国民生活センターも「ダイエット=痩身」
今回のアンケートを掲載した後、こんなリリースを目にしました。
痩身目的等のオンライン診療トラブル ―ダイエット目的で数か月分の糖尿病治療薬が処方される「定期購入トラブル」が目立ちます―(国民生活センター)
痩せようという目的でオンライン診療を受けたところ糖尿病の治療薬を大量に処方された、という事案についての国民生活センターの注意喚起ですが、ここでも「痩身目的」と「ダイエット目的」が同じ意味として使われています。
回答から見られる解説でも記しましたが、「ダイエット」の元の英語「diet」は「飲食物、食餌(しょくじ)」「規定食、特別食、食餌療法」(ランダムハウス大英和辞典)といった意味で、痩せることを指してはいません。なお新聞では「餌」の字が以前は常用漢字に入っていなかったため、また「食事」でも意味内容が重なるため、もっぱら「食事(療法)」の表記を用います。
痩せることを目指す食事は本来「低カロリーダイエット」「カロリー制限ダイエット」のように表記されるものだったはず。そこから「低カロリー」などが落ちて「ダイエット」だけが残ったのだろう、とは推測されます。毎日新聞の記事見出しでの初出は1975年。「ダイエット・ガイド」という書籍の紹介ですが、この本は「成人病予防・治療のための食事の取り方を示したガイドブック」とあります。単に痩せることを指して「ダイエット」が使われるようになったのはもう少し後の時期になりそうです。
「痩せること」と捉えて違和感なし
今回のアンケートのきっかけになった記事では、ハイフという、器具を使った施術で痩せようという試みを指して「ダイエット」が使われていました。回答の過半数が、食事との関連がなくても、痩せること・痩せようとすることを指して「ダイエット」を使うとしたことを見ても、現在では当該記事のような使い方で違和感がないのだろうと感じました。
本日は元日。一年の計は元旦にあり、ということで今年の目標に、手段はどうあれ「痩せること=ダイエット」を掲げる人もあるかもしれません。とはいえ記事で報じられたハイフのような、また国民生活センターの注意喚起のような問題も目につきます。どうぞ無理をなさいませんように。また改めまして、本年も「ことばの質問」および当サイトをよろしくお願い申し上げます。
(2024年01月01日)
医療用器具を使った美容施術について、利用した人が「ダイエット目的の施術」と述べたくだりを原稿で目にし、どこまで「ダイエット」と言ってよいのかが少し気になりました。この場合の「ダイエット」は食べることとはあまり関係がなさそうだからです。
英語の「diet」は「飲食物、食餌(しょくじ)」「規定食、特別食、食餌療法」(ランダムハウス大英和辞典)といった意味で、シェイプアップや痩せることを直接指す言葉ではありません。国語辞典でも「病気治療や健康増進・美容のために、食事の量や種類を制限すること」(明鏡国語辞典3版)といった説明が主流です。
ただし、現代国語例解辞典(5版)のように「参考」として「現在では、食事は関係なく『減量すること』そのものを指していうことが多い」と説明する辞書もあり、皆さんの受け取る語感もそちらに近いかもしれません。実際のところ、どう意識して使われているものでしょうか
(2023年12月18日)