「閣僚」が首相を含むかについて伺いました。
目次
「含まない」派が6割超
内閣のメンバーを指す「閣僚」、これは首相も含みますか? |
含む 27% |
含むことが多いが、含まないこともある 8.7% |
含まないことが多いが、含むこともある 22.6% |
含まない 41.7% |
内閣の構成員を指す言葉として使われる「閣僚」を首相も含むものと見なすかどうかは、「含まない」「含まないことが多い」が合計で6割を超え、「含む」「含むことが多い」とした人の合計をはっきりと上回りました。
広義では「含む」、狭義では「含まない」
国語辞典の「閣僚」の定義は簡単で、「内閣を組織する国務大臣」(広辞苑7版)のようなもの。それでは国務大臣はどうかというと「広義では、内閣を構成する内閣総理大臣とその他の大臣。狭義では、内閣総理大臣によって任命され、国務をつかさどる大臣」(大辞泉2版)のように説明されます。要するに、首相は国務大臣に含まれたり含まれなかったりする、ということです。
であれば、「閣僚」は首相を「含む」「含まない」のいずれでも誤りにはならないのですが、この言葉を使ったときにどう受け止められるか、というのはそれとはまた別の問題です。たとえば「衆院予算委員会は●日、岸田文雄首相と全閣僚が出席して基本的質疑を実施した」のような書き方はよく見るものですが、この場合の「閣僚」に首相は含まれていません。「閣僚経験者」といった場合に、これを元首相も含むものと考える人もまずいないのではないかと思います。
「同列に並ぶ」と感じられるか
明鏡国語辞典(3版)の「閣僚」の項目は「ふつう総理大臣は除く」と注記しています。「広義」「狭義」という言い方よりも、この「ふつう」というのが、新聞紙面での使用実態にも即している印象があります。
「僚」の字には「同列に並ぶ友達。仲間」(学研新漢和大字典)のような意味合いがあり、首相というものをどう考えるかによっても「閣僚」の受け止め方は変わってきそうです。回答から見られる解説でも記したように、日本国憲法では首相は天皇から任命される(6条)一方で、それ以外の国務大臣は首相が任命する(68条)ことになっています。こうした扱いの差も、「同列に並ぶ」という印象にはつながりにくく、首相を「閣僚」には含めないとした人が多数派を占める理由になるのではないかと思います。
新聞では「含まない」が基本
アンケートの結果では、3分の1程度は「含む」「含むことが多い」を選んでいましたが、毎日新聞では基本的に「閣僚」は首相以外を指して使うことにしており(もっとも統一が不徹底なので、今回のアンケートのきっかけになった原稿も出たわけですが)、内閣フルメンバーの場合は「首相と全閣僚による記念撮影」のような書き方をします。「閣僚会合」や「閣僚懇談会」のようなフレーズは首相・首脳を含まないのが一般的であり、誤解を招く余地は小さいでしょう。多くの場合、「閣僚」は首相を含まない狭義の意味で使われると踏まえつつ、紛らわしい使い方になっていないかに注意を払うという扱い方がよいのではないかと考えます。
(2023年10月30日)
日本の外相がウクライナを訪問した際の原稿に「閣僚によるウクライナ訪問は3月の首相以来」と説明するくだりがありました。これを見た同僚から「首相は閣僚に入るんだろうか」との質問。「閣僚」は「内閣を構成する各国務大臣」(明鏡国語辞典3版)のように説明されますが、明鏡は同時に「ふつう内閣総理大臣は除く」と注記しています。
原稿は出稿部に断りを入れて「首相や閣僚によるウクライナ訪問は~」という形にしましたが、「閣僚」という言葉は少し厄介だなと感じました。日本国憲法では、首相は天皇が国会の指名に基づいて任命しますが、国務大臣は首相が任命するものです。国務大臣イコール閣僚なら、首相は閣僚に含まれないものとなります。ただし、憲法66条では「内閣総理大臣及びその他の国務大臣」という書き方もしており、これは首相も国務大臣に含まれると読めます。
法律用語辞典をめくると、閣僚は「広義では首相を含む内閣の構成員、狭義では首相を除く国務大臣」のように説明されます。要するに「含む」「含まない」どちらもありというのが「正解」になりそうですが、言葉の感じ方として皆さんがどう捉えているかを伺いたいと考えて質問しました。いかがでしょうか。
(2023年10月16日)