1両だけで、電化されていない区間を走る鉄道車両をどう呼ぶか伺いました。
目次
最多は「列車」、「汽車」が次点
非電化区間を1両編成で走る鉄道車両――どう呼びますか? |
電車 9.2% |
列車 45.7% |
汽車 35.3% |
意味は伝わるのでどれでもよい 9.9% |
架線のない線路を1両だけで走る車両は、「列車」と呼ぶという人が最多を占めましたが、半数には届かず。「汽車」が3分の1超で続き、「電車」「どれでもよい」はともに1割弱でした。どう呼ぶのも難しいと改めて感じますが、迷う場合には「列車」を使うことをおすすめします。
「列車」の指す範囲は広い
校閲センターのツイッターには質問に関連して「気動車」ではないか、という声が複数寄せられました。もっともなご意見ですが、日常語として「気動車に乗る」と言う機会はあまりなさそうなので、選択肢には含めませんでした。
「列車」が最多になりましたが、校閲のツイッターには「営業運転なら紛れもなく列車です。単行列車とも」というご意見も。国土交通省の「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」では、「列車」の定義を「停車場外の線路を運転させる目的で組成された車両をいう」としており、かなり広い範囲のものを指すことができるようになっています。今回の質問のようなケースでも、まず「列車」と呼んで差し支えないと言えます。
鉄道以前の用法が辞書に影響か
ただし、国語辞典の「列車」の説明が、むしろ事情を複雑にしているかもしれません。
「旅客や貨物を運ぶために線路上を走る連結した車両」(大辞泉2版)
「旅客・貨物の輸送のために連結された鉄道車両」(明鏡国語辞典3版)
「鉄道線路を走る連結した車両。主に旅客や貨物を輸送するために仕立てられる」(日本国語大辞典2版)
など、「連結」を「列車」の条件としたものが少なくありません。これは鉄道の誕生以前からあった「列車」の使い方が「車をつらねること。また、その並べつらねた車」(日国)だということにもよるのでしょう。
一方で、1両で運行する鉄道を示唆する辞書もあります。
「鉄道の運行の単位として編成した車両。▽一両だけのものも言う」(岩波国語辞典8版)
「人や貨物をのせてレールの上を走らせるために編成した客車・貨車(のつらなり)」(三省堂国語辞典8版)
「鉄道の本線路を運転する車両または車両のつらなり」(広辞苑7版)
などで、「列車」は必ずしも車両の連なりでなくともよいと示しています。こちらは今回の質問のように、単独で走る気動車の呼称に困る場合があることを想定した説明と思われます。一度に一つの辞書しか引かない人が多いだろうことを考えると、辞書の間で説明がバラつくのは気になりますが、「列車」について、車両が複数であることにこだわる必要はないと考えます。
「汽車」も言葉は現役
「汽車」は、地域によっては今でも生きている語で「汽車通(学or勤)」のような言い方も、インターネットで検索する限り、まだされているようです。「ひろく鉄道一般や長距離列車の意味にも用いる」(広辞苑7版)のように説明する辞書もあり、蒸気機関車はほぼ姿を消したものの、日常語としては使い勝手のよい言葉だとも言えます。今回の質問のように「電車」を選びにくい場合を想定すると、「汽車」が回答の3分の1を超えたことも無理のないことと思えます。
今回のアンケートの結果や辞書の記述から見て、車両の数が1両であっても「列車」を使うことに問題はなく、これが第1の選択肢になると考えます。また、「電車」というよりは「汽車」を選ぶ人が多かったということも含めて、参考にしていただければと思います。
(2023年05月11日)
社内で電車と列車の使い分けが話題に上りました。校閲としては特にルールを決めておらず、「列車」は広く使えるが、電化されているものについては「電車」を使っても差し支えない、という程度の認識でした。▲つまり非電化区間では基本的に「列車」になります。しかし、これが1両編成の場合には? 国語辞典には「列車」について「旅客・貨物の輸送のために連結された鉄道車両」(明鏡国語辞典)のように説明するものがあります。これに従うと、連結されていない1両編成の場合には「列車」とも言いにくくなります。▲もっとも、こうしたケースを想定してか「一両だけのも言う」(岩波国語辞典)のように書き添える辞書もあります。あるいは「汽車」でもよいのかもしれません。地方ではよくあることかもしれませんが、出題者の郷里でも列車のたぐいは等し並みに「汽車」で済ませていました。どう呼んでも話は通じるというものでもありますが、皆さんはこの場合、どの呼び方を使うでしょうか。
(2023年04月24日)