「準備ができていること」を何と言うかについて伺いました。
7割が、準備は「万端だ」
準備はバッチリ、という言い回し。どちらを使いますか? |
準備は万端だ 69% |
準備は万全だ 31% |
「準備は万端だ」では言葉足らず、「準備は万全だ」をとるべし――というのは校閲記者にとっての「常識」ではあり、当ブログでも以前に取り上げたことがあります。
しかし、それも時代の大勢とは言えなくなってきている、と思わされる結果です。もはや「万端だ」の形で「万端整った」を意味するようになりつつある、と見るべきかもしれません。
三省堂国語辞典は2014年の第7版で、「万端」の項目において俗用と断りつつも「〔『万端ととのう』から誤解して〕ととのっていること。万全。『準備は―だ』」という語釈、用例を掲載しました。
このように不十分な語形が定着していきそうなのは、近ごろでは「万端」が「準備」と一緒でなければほとんど使われないためでしょう。
2008~17年の10年間、毎日新聞に載った記事で「万端」の語を含むものは763件。そこから「準備」を含むものを除外すると37件。似た意味の「用意」も除くと24件、わずか3%です。
準備が整う、というシーン以外で「万端」が使われないとなれば、万端の意味自体が変化するのも無理はないかもしれません。
とはいえ、現時点ではまだ「準備は万端だ」を許容するのは時期尚早。特に文章を書く場合には、「準備は万端整った」か「準備は万全だ」を使うことをお勧めします。
(2018年03月04日)
オリンピックに関連した話題でも、本番に向けて準備に抜かりはない、というような記事を見かけます。「準備万端」と口頭では言いがちかもしれませんが、これは「準備万端整った」を省略した言い回しです。「万端」は「ある物事についての、すべての事柄。諸般」(大辞林3版)。これだけでは、物事がうまくいっているという意味はありません。口頭語では、省略された「整った」を聞き手がくみ取ることで、文として成立しているのです。
しかしそれが「万端だ」となると、省略されている「整った」を読み取ることが難しくなり、文として完成しないことになります。「まったく完全なこと。手落ちのないこと」(同)を意味する「万全」なら「準備は万全だ」で問題ありません。今回の二者択一であれば、こちらを選ぶのが妥当でしょう。
(2018年02月15日)