読めますか? テーマは〈治水〉です。
目次
大戸川
答え
だいどがわ
(正解率 26%)大津市などを流れる川。治水などのため大戸川ダムが計画されたが滋賀県知事らの要望を受け事実上、建設中止となっている。きのう決まった新知事の方針はどうか。
(2014年07月14日)
選択肢と回答割合
おおこがわ | 18% |
おおとがわ | 56% |
だいどがわ | 26% |
決河
答え
けっか
(正解率 46%)川の水が堤防を破って流れ出ること。「決河の勢い」は勢いの激しいことを表す。決の字は「決定」のイメージが強いが、元は堤防を切って水を流すことを表した。いま「決壊」くらいしか元の意味では使われないと思いきや、サッカーの「決定力」は相手守備を切り裂くので本来の用法に近い。
(2014年07月15日)
選択肢と回答割合
けっか | 46% |
けつが | 34% |
けっこう | 20% |
決潰
答え
けっかい
(正解率 74%)堤防などが切れて崩れること。潰の字は以前は常用漢字ではなかったため「決壊」で代用。2010年の常用漢字改定で「潰」が入ったが「決壊」が定着していたため新聞では「決潰」は基本的に使っていない。
(2014年07月16日)
選択肢と回答割合
けっかい | 74% |
けっき | 5% |
けっつい | 22% |
輪中
答え
わじゅう
(正解率 69%)洪水から集落や耕地を守るため、周囲を堤防で囲んだ地域。主に江戸時代に濃尾平野につくられた。小学校の社会科などで習ったはず。
(2014年07月17日)
選択肢と回答割合
わじゅう | 69% |
わなか | 16% |
りんちゅう | 15% |
水嵩
答え
みずかさ
(正解率 94%)川や湖沼などの水の量。水位の上昇を「水かさが高くなる」というのは「量が高くなる」と同様の誤用。「水かさが増す」が正しい。
(2014年07月18日)
選択肢と回答割合
すいこう | 6% |
みずかさ | 94% |
みずたけ | 0% |
◇結果とテーマの解説
(2014年07月27日)
by BehBeh |
この週は「治水」がテーマでした。
今回の「大戸川」は、2009年8月に出題した「大戸川ダム」の焼き直しです。実はこの時、正解率が0%という衝撃の結果でした。これは5年以上やっていた漢字クイズの最低記録です。しかし「だいどがわ」が相当難読なのは分かりますが、3択でゼロというのはちょっと考えにくい。原因は不明ですが何らかの設定ミスかシステムトラブルがあったのでしょう。そこで再出題の機会を狙っていました。
今月13日の滋賀県知事選がその機会だと思ったわけです。ですが大戸川ダムは少なくとも滋賀版以外の本紙で見る限り、原発とか集団的自衛権などに隠れ、大きな争点にはならなかったようです。そのせいか、今回もっとも低い正解率にとどまりました。しかし少なくともゼロではありませんでした。
「決河」というのは辞書をぱらぱらめくっていて偶然見つけた言葉です。このような知らない言葉との偶然の出合いは電子辞書ではなかなか体験できないでしょう。「決」の字は「漢字ときあかし辞典」(円満字二郎、研究社)によれば「本来は“堤防を切ってある方向に水を流す”という意味」「『堤防が決壊する』がその例で、『交渉が決裂する』のように“支えられなくなって切れる”ことを表すのも、そこから転じたもの。一気に水を流す“思い切りのよさ”とともに、“後戻りできない”という感覚をも伴う」とのこと。なんとなく「アリの一穴」ともいわれた集団的自衛権行使容認の閣議「決」定を思わずにいられません。この言葉は長くいえば「アリの穴から堤も崩れる」ですし。
「決潰」が4人に1人程度読めないというのはやや意外でした。「潰」は2010年に常用漢字になったのですが、「胃潰瘍」などは読めても「決潰」は見たことがない人が多いくらいに「決壊」の表記が定着したということなのでしょう。余談ですが、あるテレビ番組で医者の卵が「潰瘍」を「漬瘍」とボードに書いていました。編集段階で誰か気づいて直してあげられなかったのでしょうか……。
「輪中」は確か小学校で習うことだと思うのですが、それにしては低めです。しかし該当地区以外では日常会話やニュースに頻繁に出る用語でないので、忘れてしまうのも無理からぬことかもしれません。
「水嵩」が今回最も正解率が高くなりました。嵩は常用漢字ではないので新聞では「水かさ」としますが、語そのものはニュースに頻繁に出てきますので分かりやすかったのでしょう。出題時の解説に「水かさが高くなる」は「水かさが増す」の誤りと記しましたが、「水かさが上がる」も同様に不適切といえます。もっとも「かさ上げ」「かさ高」という言葉はありますが、これらは「かさ=体積・容積」の意味から離れた慣用表現と見なせるでしょう。
日本語はよく濁流のように制御しがたい動きを示し、時に誤用も氾濫しますが、校閲としてはしっかり「治水」をしたいと思います。