読めますか? テーマは〈羊を含む字〉です。
目次
四分儀
しぶんぎ
(正解率 83%)象限儀(しょうげんぎ)ともいう。円の4分の1の形をした盤が主体の天体観測器。江戸時代に使われた。昨日ピークとなった「しぶんぎ座流星群」にその名を残す。儀の字は「人+義」、義は「羊+我」から成る。
(2015年01月05日)
選択肢と回答割合
しぶぎ | 10% |
しぶんぎ | 83% |
よんぷんぎ | 7% |
達磨市
だるまいち
(正解率 81%)達磨はインドの僧で中国の禅宗の始祖。その座禅姿の人形は日本で七転び八起きの縁起を担ぐものとされた。達磨市は新年の季語。1月6、7日は群馬県高崎市の達磨寺で「七草大祭だるま市」がある。達磨は当て字。達の右下に羊の字があり、一説につくりは子羊が生まれる姿を表す。
(2015年01月06日)
選択肢と回答割合
たつまし | 5% |
だるまいち | 81% |
だるまし | 14% |
羊歯
しだ
(正解率 91%)「歯朶」などとも書く。シダ類の総称。または特にウラジロを表す。しめ縄や鏡餅の飾りに用いる。常緑で裏が白いウラジロを、夫婦共白髪の長寿になぞらえ縁起物とされる。和名は垂れ下がるという意味の「しだれる」から。「羊歯」は小葉の連なった形を羊の歯に見立てたという。
(2015年01月07日)
選択肢と回答割合
しだ | 91% |
やつで | 6% |
よし | 3% |
羊羹
ようかん
(正解率 99%)ご存じの和菓子。羊羹は中国で羊の肉の入った汁物を表した。羹の上部の「羔」は子羊、下の「美」はおいしいという意味がある。羹はことわざ「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」(一度の失敗に懲りて度の過ぎた用心をすること)にもなっている。菓子の意味は日本での用法。
(2015年01月08日)
選択肢と回答割合
なます | 0% |
かるかん | 1% |
ようかん | 99% |
羞悪
しゅうお
(正解率 48%)自分の欠点を恥じ、他人の悪い点を憎むこと。中国の孟子が説く性善説の一つとして出る。羞は「羊」と「丑」から成る。元は「ごちそうを他人にすすめる」という意味だった。それがなぜか「恥じる」意味に変化した。
(2015年01月09日)
選択肢と回答割合
がんあく | 5% |
しゅうあく | 48% |
しゅうお | 48% |
◇結果とテーマの解説
(2015年01月18日)
この週は「羊を含む字」でした。「羊」の字を使う熟語はそれなりにありますが、難読語はそれほど多くはないようです。今回出題した「羊歯」「羊羹」も、かなり高い正解率になりましたが、ある程度予想できました。ですから羊の字自体ではなく、「羊」を構成要素として持つ字も加えました。
by アリオト |
まず「四分儀」。「儀」のつくりの「義」の字は、いけにえの羊をのこぎりで切り神にささげることから、神意にかなう、正しいという意味になったという説が有力のようです。四分儀は「象限儀」という場合の方が多いのですが、現物は例えば国宝を千葉県香取市の伊能忠敬記念館が所蔵しています。
「達磨市」の「達」については「白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい」(小山鉄郎、共同通信社)から引用しましょう。しんにょう以外は「子羊が生まれ落ちる姿を後ろから見た形を文字化しています」。「とどこおりなくとおることから『とおる、およぶ』などの意味となりました」。達磨さんはインド出身の人なのでこの字は当て字なのですが、その人形が今でも人気なのは、一つには七転び八起きの象徴としてですが、もう一つには達の字の意味がいいからかもしれません。「とおる」という意味は受験生にもありがたがられますし。
今回最も正解率が低かったのは「羞悪」。「孟子」に出てきます。羞の字(羊+丑)が「はじる」の意味となった理由について、「漢字ときあかし辞典」(円満字二郎、研究社)には「部首『羊』が付いているのは、本来は“羊の肉をお供えする”ことを表していたから。“はじる”という意味が生まれた経緯ははっきりしないが、“細く絞った羊の肉”という意味があるという説は、“心が縮こまる”との関係で、参考になる」とあります。素人考えですが「こんなつまらないものしかありません」と謙遜して「はじる」意味が生じたのでしょうか。
なお、「羞悪」は「義」に通じます。「孟子」に「羞悪の心は、義の端(はじめ)なり」(悪をはじにくむ心は義の芽生え)とあります。人間に義を含む仁義礼智の芽生えがあるのは「ちょうど四本の手足と同じように、生まれながらにそなわっている」(岩波文庫)。性善説の核心で、美しい説です。ちなみに性善説の「善」も「美」と同じく「羊」を部首とします。
ところで、「羊」の字に関する記事で「羊は祥の略字」という原稿がありました。漢和辞典を複数あたりましたが、そんなことは書かれていません。ただ白川静さんの「字通」(平凡社)に「漢代の鏡銘や瓦塼(がせん)の類に、羊を祥の字に用いることが多いが、省文にすぎない」とあります。これを略字とみなせば記事は間違いとはいいかねますが、やはり一般的に使う「略字」とは違います。「羊は祥に通じ」と直りました。
いずれにせよ、「羊」は十二支にちなむ動物の中でも好ましいイメージという点で一、二を争う字といえましょう。