見出しで、芥川賞作家の綿矢りささんが「綿谷りさ」と間違っていて冷や汗。この「矢」、固有名詞でしばしば他の漢字に取って代わられる傾向にあり、要注意の部類に入る。
同様に「谷」と書かれてしまいがちな例として、ロック歌手の矢沢永吉さんが谷沢、富山県小矢部市が小谷部市など。
名前では多数派の「也」になってしまうことが多く、俳優の武田鉄矢さんが鉄也、仲代達矢さんが達也になるのは定番で、気を付けたい。
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「取りこぼされる」と「取り残される」
by のぽちん(休暇中) |
「死後認知認め無戸籍解消、大阪家裁判決」の記事で、「(戸籍がない状態の人は)行政サービスから取りこぼされている」とあった。「網の目からこぼれ落ちる」というニュアンスで使っているのは理解できるが、どうも違和感が残る。
辞書を見ると「取りこぼす」は「当然勝てるはずの勝負で負けること」という意味で、「下位のチーム相手に取りこぼす」との用例が掲げてある。この文脈では不適切で、「取り残される」に改めた。
似た発音にも落とし穴
NYダウ大幅反発で「米経済の堅調さが確認され、買い注文が優先となった」のくだり。初校でうっかり見逃したが、再校で誤りと指摘され「買い注文が優勢」と直った。発音が近い別の言葉に打ち間違えるケースも後を絶たない。
言葉そのものを勘違いして覚えている場合もあるが、大半は単純なキーボードの操作ミスか。「意思を表面する」「詳しい事態調査」「必至の条件」は最近目にした例で、「表明」「実態」「必須」が正解だ。
「かわす」の漢字表記
野球の記事で「変化球で交わして」「強力打線の目先を交わす」とあったが、「外す・そらす」の意味合いなので、「かわす」と平仮名にした(漢字では「躱す」)。変換ミスは熟語に限らず、このように動詞にまで及ぶので侮れない。
先日も、ある投手が「僕らができることは、負かされたイニングをゼロに抑えること」とコメント。さすがは厳しい勝負の世界に生きるプロの言葉と感心したが、誤字があっては台無し。「任された」として事なきを得た。
相次いだ人名間違い
×本郷里華→○本郷理華(フィギュアスケート選手)
×安倍清明→○安倍晴明(平安中期の陰陽師)
×坪内捻典→○坪内稔典(俳人)
×竹之内豊→○竹野内豊(俳優)
×杉浦千畝→○杉原千畝(ナチス・ドイツの迫害から逃れようとしたユダヤ人にビザを発給した元駐リトアニア領事代理)
×上野昴志→○上野昂志(映画評論家)=「昴」は「すばる」、「昂」は「たかぶる」で別字
【武田晃典】