読めますか? テーマは〈紅葉の名所〉です。
目次
英彦山
ひこさん
(正解率 60%)福岡・大分県境にある修験道の霊峰。JR日田彦山(ひたひこさん)線の路線名と駅名は「英」のない「彦山」。神社は「英彦山神宮」。山名は江戸時代に法皇から「英」の尊称を受け、彦山から英彦山になったという。英彦山は10月中旬から11月下旬に見ごろとなる紅葉の名所。
(2015年10月26日)
選択肢と回答割合
あいひこざん | 13% |
ひこさん | 60% |
ひでひこやま | 27% |
小涌谷
こわくだに
(正解率 96%)神奈川県箱根町の温泉地。「こわきだに」とも読み、箱根登山鉄道の小涌谷駅は「こわきだに」だ。現在、火山の火口近くにある大涌谷は警戒区域だが、それ以外の小涌谷などでは観光が可能という。11月中旬から下旬が紅葉の見ごろ。
(2015年10月27日)
選択肢と回答割合
おづや | 2% |
こおけがや | 2% |
こわくだに | 96% |
御岳渓谷
みたけけいこく
(正解率 65%)東京都北西部。多摩川のほとりにある紅葉の名所。昨年噴火災害のあった、長野・岐阜両県にまたがる御嶽山(おんたけさん)の嶽の字は岳の旧字。東京の御岳山(みたけさん)や御岳渓谷は新字を使うが、近くのJR駅は「御嶽駅」、神社は「武蔵御嶽神社」だ。
(2015年10月28日)
選択肢と回答割合
おたけけいこく | 9% |
おんだけけいこく | 26% |
みたけけいこく | 65% |
三次市
みよしし
(正解率 77%)広島県北部。秋の早朝は「霧の海」に包まれる。市内にあるJR三江(さんこう)線(追記:2018年に廃止)沿線の尾関山公園は紅葉の名所。尾関山駅は「紅葉狩(もみじがり)」の愛称がある。
(2015年10月29日)
選択肢と回答割合
さんじし | 1% |
みつぐし | 22% |
みよしし | 77% |
栂尾
とがのお
(正解率 59%)京都市西部。高雄(たかお)、槙尾(まきのお)とともに三尾(さんび)といわれる紅葉の名所だ。高雄の「お」は今の地区名としては「雄」だが、歴史的には「高尾」とも書かれていた。
(2015年10月30日)
選択肢と回答割合
つがお | 36% |
とがのお | 59% |
ふさお | 5% |
◇結果とテーマの解説
(2015年11月08日)
この週は「紅葉の名所」でしたが、「別の表記・読みがある地名」というサブテーマがありました。
「英彦山」と「彦山」はともに「ひこさん」と読むのが普通です。しかし「英彦山」を「えひこさん」「えいひこさん」と読むこともあったようです。出題時の解説に記した通り、江戸時代に霊元法皇から「英」の字をたまわり「彦山」から「英彦山」になったのですが、それによって複数の読みが生まれたのかもしれません。
「小涌谷」。昔は「小地獄」と呼ばれていたのですが、「大地獄」と称された大涌谷とともに明治天皇が訪れた際に改称したそうです。箱根の噴火の報道で何度か出てきた地名ですが、「涌」が「湧」になっているのを見たことがあります。あくまでも想像ですが「こわくだに」と打って変換しないパソコン(「怖くダニ」なんて誤変換も)で1字ずつ打って間違えたのかもしれません。なお、写真で示した箱根登山鉄道の小涌谷駅は「こわきだに」ですが、箱根ロープウェイの大涌谷駅は「おおわくだに」と読ませています。
ところで、「新潮日本語漢字辞典」によると「湧」と「涌」は別の字ではなく、「涌」が本字とされています。しかし2010年の常用漢字改定で「湧」が入ったので、本来の字体である「涌」の方がいわば異体字という扱いになります。常用漢字で書くという原則に基づくと「大湧谷」「小湧谷」の方が正しいことになってしまいます。いうまでもなく、それは認められません。
「御岳渓谷」。「御岳」と「御嶽」の紛らわしさについては以前のブログでも取り上げましたが、「岳」も一筋縄ではいかない字体です。
「御岳渓谷」の解説について、毎日新聞の読者から「角川新字源」には岳の方が旧字となっている、どちらが本当かという趣旨の質問がありました。そのお答えを引用します。
お持ちの「新字源」と同じ版かどうかわかりませんが、職場にある新字源の 岳にはこうあります。
「古くから岳が嶽の古字とされている」
この「古字」というものは、「旧字」とは意味が違います。同辞典の前書きによれば古字とは「周金文、または『説文解字』所載の古文、籀文(ちゅうぶん)・大篆(だいてん) を楷書形に改めたもの」とあります。専門的で分かりにくいのですが、要するに、古代の中国で使われていた文字ということです。
これに対し「旧字」は、普通は当用漢字制定(1946年。49年に字体整理)以前に出版物などで多用されていた字のことをいいます。
「新字源」でもまず【岳】とありその後に[嶽]とあります。これは「岳」が常用漢字として一般的に用いる字体であり、嶽はその旧字にあたることを示すものです。
別の漢和辞典では「『岳』は『嶽』の古字として古くから通用してきたが、常用漢字では『嶽』を『岳』の旧字体とする」とあります(三省堂「全訳漢辞海」)。
つまり、岳は古代への先祖返りといえます。が、一方で嶽と岳は併用され、あまり旧字新字として意識されていないのではないでしょうか。「湧」と「涌」の関係のように、事実上別字のように使い分ける実態があります。
次に「三次市」。徳島県には同じ読みで「三好市」が、愛知県には「みよし市」があります。紅葉の名所として尾関山公園があり、最寄り駅が「紅葉狩」の別名を持つということで選びました。
今回最も正解率が低くなったのは「栂尾」でした。この「栂」は漢和辞典によって「国字」とするものと「梅」の異体字とするものがあります。梅は多くの異体字があり、楳図かずおさんの「楳」もその一つ。栂も中国では異体字とみなされているようですが、日本では「つが」「とが」と読む別の木の字とされますので、事実上、日本で生まれた別の字、すなわち国字であるという判断ももっともです。なお京都の栂尾とは別に「つがお」と読む字(あざ)があることに後で気づいてしまいました。徳島県美馬市美馬町栂尾。だから選択肢に「つがお」を入れたのは不用意でした。ただテーマ名に「紅葉の名所」とあり、美馬市の栂尾にも紅葉のきれいな場所はあるかもしれませんが、名所といわれてはいないようですので、一般的な紅葉の名所としては「とがのお」が正解ということでご容赦ください。