読めますか? テーマは〈芸能と猿〉です。
目次
猿若
さるわか
(正解率 53%)歌舞伎の役柄で道化役。出雲の阿国の時代に登場し、物まねや木やり音頭などを披露した。江戸時代には浅草に「猿若町」という芝居町もあった。
(2016年01月25日)
選択肢と回答割合
えんじゃく | 35% |
えんにゃく | 12% |
さるわか | 53% |
猿飛出
さるとびで
(正解率 43%)能面の一種。目を見開き、口を大きく横に開く。猿に似ていることからの名とされる。「鵺(ぬえ)」などで使われる。
(2016年01月26日)
選択肢と回答割合
さるとびだし | 46% |
さるとびで | 43% |
えんひしゅつ | 12% |
申楽談儀
さるがくだんぎ
(正解率 78%)室町時代の世阿弥の芸談集。猿楽といわれる、物まねや曲芸などの見せ物を、世阿弥は舞と謡を中心とする能へと大成させた。世阿弥は神楽の「神」のつくり「申」の字にちなみ猿楽を申楽と表記した。「だんぎ」は一般的に「談議」か「談義」だがここでは儀式などの「儀」の字だ。
(2016年01月27日)
選択肢と回答割合
さるがくだんぎ | 78% |
しんがくだんぎ | 14% |
さるらくだんぎ | 8% |
猿女
さるめ
(正解率 66%)古代、朝廷で神楽の舞などを踊った女官。天の岩戸の前で踊ったアメノウズメと関連があるとされる。「さる」は一説に「戯(さ)る」から。
(2016年01月28日)
選択肢と回答割合
えんにょ | 17% |
さるおんな | 17% |
さるめ | 66% |
靱猿
うつぼざる
(正解率 54%)狂言の一つ。大名が猿回しの猿の皮をうつぼ(矢の携帯用容器)にしようとするが、可哀そうになり許す。うつぼは本来「靫」だが昔から混用されてきた。「日本国語大辞典」では狂言の演目も含め「靫」と表記している。
(2016年01月29日)
選択肢と回答割合
じんえん | 29% |
うつぼざる | 54% |
ゆきざる | 18% |
◇結果とテーマの解説
(2016年02月07日)
この週は、「芸能と猿」でした。一般になじみのない語が多かったせいか、全体的に低い数字になりました。
最も正解率が高かった「申楽談儀」でも78%。世阿弥の能楽論としては「風姿花伝」が有名ですが、「申楽談儀」は世阿弥が語ったことを次男元能がまとめたもの。正式には「世子六十以後申楽談儀」といいます。出題時にも記しましたが「だんぎ」の「ぎ」はにんべんです。一般語としての「だんぎ」は「談議」か「談義」なので、誤字になる可能性の高い語といえます。
「申楽談儀」の初めに「さるがくとはかぐら」とあり、世阿弥の芸論の根本には神楽があったことが打ち出されます。「風姿花伝」でも
神楽なりしを、「神」といふ文字の偏を除けて、旁(つくり)を残し給ふ。これ、日暦(ひよみ)の「申(さる)」なるがゆへに、「申楽」と名づく。すなはち、楽しみを申すによりてなり。または神楽を分くるばなり。
と、「神」から「申」の字になり「申楽」となったという起源論が語られます(角川ソフィア文庫より)。ちなみに「能」という呼び名はまだ室町時代にはなかったようです。能の元祖に相当する「猿楽」という芸は滑稽(こっけい)な見せ物でしたが、それとは根本的に違う幽玄な芸術を世阿弥は作り上げました。その名にふさわしい字として「猿」ではなく「申」を選んだと思われます。
さて「風姿花伝」で申楽の始まりとして語られるのがアメノウズメの神話ですが、この神様は「猿女」の祖神とされています。「日本架空伝承人名事典」(平凡社)には「猿女とは宮廷神事の滑稽なわざを演じる俳優(わざおぎ)を意味した」とあります。
「猿飛出」は能面「小飛出(ことびで)」の一種。「鵺(ぬえ)」で使われます。この中での鵺は
頭(かしら)は猿 尾は蛇(くちなわ)、足手は虎のごとくにて
と語られる妖怪。平家物語にも出て、源頼政に退治され、空舟(うつおぶね)に流されます。この「うつお舟」は「うつぼ舟」ともいいます。うつぼ舟は異界のものが乗るという伝説の舟ということです。
「靱猿」の「うつぼ」は、矢を入れる携帯の入れ物です。一般に「靫」の字があてられます。しかし古来、別字であるはずの「靱」の字と混用されてきました。大阪にお住まいなら「靱(うつぼ)公園」の例が浮かぶはずです。広辞苑の「うつぼ」の項には「『靱』と書くのは誤用」という注がありますが、狂言などの演目としては「靱猿」の表記を取っています。一方、日本国語大辞典は「靫猿」とあえて他の辞書とは違う表記を採用しています。
最後におわびです。「猿若」の選択肢に「えんじゃく」を入れていましたが、歌舞伎役者に「市川猿若」さんがいるので、不正解として扱ったのは不用意でした。この漢字クイズでは人名を出す場合フルネームにしているので、今回は想定外でした。しかし歌舞伎役者の場合は下の名前のみで呼ばれることが多いので、あの人のことだと思って答えた方には不愉快な設問だったと思います。申し訳ありません。