8年ぶりに改訂された「三省堂国語辞典」(三国)8版の校閲記者注目ポイントを紹介しています。
8年前に7版が出た際は「三国から美人が7人もいなくなった」と話題になりました。つまり、「古めかしく感じられたり、昔の男性目線で書かれたりした用例だった」(三省堂辞書出版部の奥川健太郎さん)という考え方で用例から「美人」という語を削除したのです。
今回の改訂でも、そうした考え方をさらに進め、削除したり、説明を加えたりしています。
目次
「『美人』は主観的なもの」
7版で残っていた「美人」のうち「比喩」からも消えました。
インタビューした編集委員の飯間浩明さんは「性別の問題だけでなく『ルッキズム』の問題でもあります。そもそも『美人』というのは主観的なものであって、ジェンダーと同じで社会的につくられるものじゃないかなと思っています。やたら絵に描いたような美人が出てくる例文はやめようと考えています」と話しています。「ルッキズム」も8版で新たに掲載されました。
「男らしい」「女らしい」
単に削除すればよいというものではありません。
例えば「男らしい」「女らしい」。
こうした言葉が辞書に載っているのはけしからんと思う人もいるかもしれません。しかし、現に言葉があって使われているなら、それが良い言葉であるか悪い言葉であるかは辞書に載せるかどうかの基準にはなりません。しっかり載せた上で、意味だけでなく、どういう使われ方をしているかを説明する。それを読んだ人自身に言葉を使うか使わないかを判断してもらうという姿勢なのです。
「美白」の“価値観”
ルッキズムにかかわる「美白」でも、価値観の問題を提示しました。
「未亡人」は「失礼」
また、本来「妻は夫に殉ずるもの」という考えに基づく自称である「未亡人」という言葉は新聞では使わずに「故○○氏の妻」などと書くようにしています。
辞書も「失礼な言い方」と断言してくれました。
「口紅」「悋気」は性別と関係なく
さりげなく「口紅」の語釈も変わりました。
さらに「悋気(りんき)」という難しい言葉でも。
「男女の間の」とは限りませんし、相手が「好きな人」だからこその悋気なのです。
三国は8版でもさまざまなところに気配りがありました。
【平山泉】