「雲の合間に広がる眼下の眺め」「学校に乱入した○○容疑者」「敵の攻撃を受けないよう逃避行を続けた」「メダル候補に勇躍」「物議を醸し出す」……。
しばしば見かける、本来とは違う意味合いで使われている言葉や、辞書ではあまり見つからない表現について、「直す」か「直さない」かをマスコミ各社の用語担当者に聞いたアンケートをまとめた第3弾です。(調査について詳しくは①をご覧ください)
目次
合間
直す=14.5社 |
直さない=6.5社 |
例文の「合間」の使い方については「慣用的ではない」「奇異に感じる」という指摘があり、「(合間は)時間的な隙間(すきま)を指す言葉で、空間的な隙間には適用されない」などとして、「切れ間」「雲間」などに直すとする意見が多数だった。
一方で「直さない」とする声も3分の1近くあり、「合間には空間的な隙間の意味も含むので許容できる」とした社もあった。
乱入
直す=8.5社 |
直さない=12.5社 |
意見が分かれ、両論併記も3社あったが、「直す」という意見は少数派になった。直す理由は「(乱入は)大勢で乱暴に押し入ること」「押し入ったのが複数でないと使えない」などが挙がり、単に「押し入った」「侵入した」などにするとした。ただ、直す派の中にも「最近では一般的に使うので許容範囲かもしれない」と付記するものがあった。
「直さない」という意見では「もはや定着したのでは」「『闖入(ちんにゅう)』の言い換えとしては許容範囲」「『乱入』と『爆笑』は許容か」などのコメントがあった。中には「広辞苑などでは『大勢が』という意味は載せていない」からと許容しつつも、「多くの辞書では『大勢』なので、自分で文章を書く場合は使いたくない」とする声もあった。
逃避行
直す=16社 |
直さない=5社 |
多くは「逃げ続けた」などに直すとした。逃避行は「事情があって世間の目を逃れることで、単に逃げるということではない」などが理由。
一方で、「直さない」も4分の1弱あった。「人目を避けて移り歩くと見て」のほか、「『世間をはばかる』との前提が共有されているとは思えない」という声があった。
勇躍
直す=20社 |
直さない=1社 |
「勇躍」は「奮い立つ気持ちの表現」であるなどとして、「躍進した」「躍り出た」「浮上した」などに直すとする声がほとんどだった。
「このような使い方を何度か目にしたが、字面に引っ張られているだけという印象がある。また『海外へ勇躍する』のように『雄飛』と取り違えている例も散見されるが、『勇躍、海外へ渡る』と直している」というコメントもあった。
醸し出す
直す=21社 |
直さない=0社 |
「直さない」はゼロだった。直し方の例は「醸している」「醸し始めている」「呼んでいる」など。
「物議を醸す」で慣用表現だという声のほか、「醸し出す」になると「そこはかとなく」という弱い表現になり、「物議」という強い表現と相いれない、という意見もあった。