「○○ガチャ」という形で使われる言葉について伺いました。
目次
「分かる」が6割占める
「親ガチャ」「子ガチャ」などの「○○ガチャ」――意味は分かりますか? |
分かる 59.9% |
何となく分かるが、説明がほしい 22.6% |
見たことはあるが、分からない 8.6% |
見たことも聞いたこともない 8.9% |
「親ガチャ」「子ガチャ」のような「○○ガチャ」という言葉については、「分かる」とした人が6割を占めました。出題者は、毎日新聞の川柳欄で出てきたこれらの言葉が読者に通じるかどうかが気になっていたのですが、「分かるかどうか」という意味ではさほど問題のない言葉だと言えそうです。
カプセルトイにさかのぼる言葉
「ガチャ」という言葉は、元々はカプセルトイまたはカプセルトイの販売機のこと。「ガチャ」はタカラトミーアーツの商標ですが、「ガチャポン」「ガチャガチャ」(いずれもバンダイの商標)の略と考える人が多いのではないでしょうか。ちなみに毎日新聞の用語のルールを載せる用語集は「カプセル自動販売機」と言い換えるよう促します。
「ガチャ」の特徴は、販売機に入っている複数の商品から何が出てくるかは、購入後にしか分からないこと。ここから派生した用法として、近年は主にスマートフォンのゲームで「ガチャ」という言葉が使われます。デジタル大辞泉の「ガチャ」の項目には
スマートホンのソーシャルゲームなどで、アイテムを抽選によって購入・取得する仕組み。ルートボックス。
とあります。ルートボックスとは「ガチャ」のようにランダムでアイテムを得られる仕組みを表す英語です。スマホゲームが多くの人に親しまれていることから「○○ガチャ」という言い方も通じやすいものになったのでしょう。
流行語大賞にノミネート
「出てくるものがランダムで選べない」というのが「ガチャ」の特徴です。そこから、子供が親を選べないことを「親ガチャ」、親も子供を選べないことを「子ガチャ」という使い方も見られるようになりました。「親ガチャ」は今年のユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされたことから見ても、ある程度社会に浸透したと考えられているようです。
しかし「親ガチャ」のいう「子供が親を選べない」という事実自体は、昔から変わらないものです。なぜそれが今、殊更に新語の装いで言われるようになったのか。メディアでは、格差の固定化が進んだことでどのような家庭に生まれるかが人生に与える影響が大きくなったため、と言われます。親ガチャに外れたら子供の人生は大変だ、というわけでしょうか。
作家の橘玲さんの「無理ゲー社会」(小学館新書)には「遺伝ガチャ」という言葉も出てきます。現代のリベラリズムの一派は、現代社会における成功は「遺伝的宝くじ(遺伝ガチャ)」に当たった幸運な者が独占し、外れた者は成功から排除される――というように考えるといいます。個人の努力ではどうしようもない(努力できるかどうかも「ガチャ」で決まる)ものが全ての人の頭上を覆っている、というのが現在の世界の共通認識なのかもしれません。
重い事実を軽く装う
今回のアンケートの結果からは、「○○ガチャ」という形の言葉が意味の比較的通じるものになっていることが分かりました。カプセルトイやゲームから派生した軽い装いの言葉ですが、重たい事実をあまり深刻に見せないために、あえて使われている言葉とも言えそうです。
もっとも「親ガチャ」とは逆に、生まれることや親を選ぶことができたならどうなのか。芥川龍之介の「河童」には、生まれる前の子供が父親の遺伝や生きること自体を苦にして出生を拒否するという場面が描かれていました(河童は胎児もしゃべります)。「河童」は人間界を戯画化した作品とされますが、生まれるかどうか、親を受け入れるかどうかまで自分で判断する世界も、さぞかししんどいものだろうと思うのです。
(2021年11月23日)
毎日新聞の万能川柳欄で「『親ガチャ』て何さと親は言いたいよ」(伊勢・オカリナ)という句を見かけました。その数日後には「子ガチャには外れは無いと思います」(取手・はにわゆう)という句も。それぞれ、そうだよなあとは思いつつも、この「親ガチャ」「子ガチャ」が誰にも意味が通じるものかは少し気になりました。▲「ガチャ」はネット上の辞書によると「スマートホンのソーシャルゲームなどで、アイテムを抽選によって購入・取得する仕組み。ルートボックス」(デジタル大辞泉)。要するに「ガチャポン」などの商標名で呼ばれるカプセル自動販売機に似た、ランダムでアイテムなどを得る仕組みです。▲「親ガチャ」は、子どもは親を選べないということをこの仕組みになぞらえた表現で、「子ガチャ」もまた同様です。「ガチャ」という音から、スマホゲームを知らない人でも何となく想像はつくかな、とは思うのですが、実際のところはどうでしょうか。
(2021年11月04日)