「女優」という言葉について伺いました。
「女優」は「問題ない」が約半数だが「男女平等ではない」も4割
男性俳優は普通「俳優」なのに、女性俳優を「女優」というのは…… |
男女平等でないと感じる 40.6% |
問題ないと思う 47.8% |
積極的に「女優」を使いたい 11.7% |
「問題ない」派が約半数を占めましたが、「男女平等ではない」と感じる方も4割。「女優」を使いたいという方は1割程度でしたが一定数いるようです。
白川静「字統」では、「俳」という字の項目で
もと二人相戯れて演技したものであろう。……遊戯することを俳といい、その人を俳優という。……優は悲劇を意味する字である
と書かれています。「優」については
憂愁にうちしずむ姿を優といい、またその姿をまねするものを優という。……古くは優は、神に対して憂え申す態をなしたものであると思われる
としています。元々は「俳」は喜劇役者、「優」は悲劇役者といったところでしょうか。
この2文字をつなげた「俳優」には「わざおぎ」という読みもあります。「大辞泉」を引くとこっけいな動作をして歌い舞い、神や人を慰め楽しませること。また、それをする人」。
この言葉の最も古い使用例は「日本書紀」の「天鈿女命(あめのうずめのみこと)……巧作俳優(たくみにわざおぎす)」なのだそうです(「世界大百科事典」)。
この天鈿女命は、天の岩戸の前で踊ることによって場を盛り上げ、隠れた天照大神を外へ誘い出したという日本神話で有名な女神。俳優の元祖は女性なのでした。そういえば歌舞伎役者の元祖といわれる出雲阿国も女性ですね。
だからこそ男女にかかわらずいずれも「俳優」に……などとは今回のアンケート結果からは言いづらいところです。一方で「女優」に不平等さを感じる4割の方を無視するわけにもいかないでしょう。
多くの人が納得できる統一的なルールを定める段階にはないようですが、個別の文脈において不自然に女性であることを強調しすぎていないか注意をすることは必要だと思われます。
(2018年06月26日)
5月に英国のヘンリー王子と結婚したメーガン・マークルさん。毎日新聞が結婚式の記事でつけた肩書は「米国の俳優」でした。「毎日ことば」では以前、女性の場合の「俳優」と「女優」の使い分けについての記事を掲載しました。
本人の希望などもあり統一は難しく、ルールは決めていませんが、女性についても「俳優」と書く流れにあるようです。
新聞では男女平等の観点から、職業などでことさらに男女を強調しないようにしています。たとえば「女流作家」というような表現は、メインは男性であるという印象を与える可能性があるので(男流作家とはいいませんから)、「女性作家」などと書き換えます。
役者さんではもちろん「男優」という言葉があり、多くの辞書では「女優」の項目に反対語として示されているのですが、「主演男優賞」のような形では使われても肩書として一般的ではありません。こうした事情もあっての「女優」から「俳優」への流れでしょうが、ネット上には「女優」が使われなくなることを残念がる声もあります。
(2018年06月07日)