「島国」という言葉の使い方について伺いました。
目次
「完全に海に囲まれた国」が最多
「島国」という言葉、どんな国に使いますか? |
島を領土とし、完全に海に囲まれた国 67.4% |
島を領土とし、主要部が海に囲まれた国 26.2% |
島(の一部)を領土とする国。海に囲まれていなくともよい 6.4% |
「島国」という言葉をどんな国について使うかは、「島を領土とし、完全に海に囲まれた国」という人が3分の2を占めました。「海に囲まれていなくともよい」と考える人は1割にも届かず。この考え方でいくと、今回の質問のきっかけになったハイチ(ドミニカ共和国と陸上の国境を持つ)のような国はたとえ島にあるとしても「島国」とは言いにくくなります。
陸上の国境を持つ国は?
回答時に見られる解説でも引きましたが、国語辞典の「島国」の項目には「周囲を海で囲まれた国」(大辞林4版)、「四方を海に囲まれた国」(広辞苑7版)のような説明が載っています。今回のアンケートでの多数派の回答は、こうした説明に沿ったものだと言えます。ただし、これらの説明だと「オーストラリアはどうなんだ」という声も聞こえてきそうですが……(オーストラリアは大陸なので「島国」と呼ばれることはありません)。
しかし、これらの辞書の説明に従うと、島々からなる国であっても、例えばイギリスやインドネシアのように、アイルランドやマレーシアなどとの国境線を持つ国は当てはまらないことになります。辞書では新明解国語辞典(8版)が例外的に「海に囲まれた」を説明に含めず、「領土が(いくつかの)島からなる国」とする語釈を載せています。大陸に領土を持たない国ということ。実際に存在する国々のことを考えると、この説明の方が使いやすいとも感じます。
「島国根性」とも言いますが…
国語辞典が「島国」を海に囲まれていることにしたがるのは、「島国」の項目に必ずくっついている「島国根性」につなげるためかもしれません。「外国との交渉が少ないため、視野が狭く、他人に対する許容力も乏しく、こせこせしている、島国の住民に一般に認められる傾向」(岩波国語辞典8版)――散々な言いよう、言われようですが、「島国」でも他国と接する国があることにすると説明がしづらくなるので、あえて「島国」は「海に囲まれた」ままにしてあるのでしょうか。
イメージと実態が共存する言葉
実際の使い方として陸上の国境線を持つハイチや英国を指して「島国」と呼んだとしてもあまり気にする人はいないでしょう。ここでは「大陸の国でなければOK」という緩い捉え方がなされます。一方で、「島国」という言葉が先に立つ場合には「海で囲まれた国」と考えるという、一見矛盾しているような捉え方がされています。イメージとしてはあくまで「海に囲まれた国」、でも実際には緩い形で使われるという、共存が生じているのが「島国」という言葉といえそうです。
(2021年09月14日)
カリブ海の島国ハイチが強い地震に襲われた――相次ぐ災害に胸が痛みますが、それとは別に校閲記者として気になることがありました。ハイチは隣のドミニカ共和国と陸上の国境で接していますが、果たしてこれを「島国」といってよいのでしょうか。
毎日新聞の記事データベースで検索してみると、ハイチについては以前から「島国」と呼んでいます。ということは、細かい定義は抜きにして、カリブ海の島々に含まれる国と考えれば「島国」がなじむというのが共通認識なのかもしれません。
ただし、国語辞典で「島国」を引くと「四方を海に囲まれた国」(広辞苑7版)、「周囲を海で囲まれた国」(大辞林4版)のような定義が主流です。もっともこれをしゃくし定規に当てはめると、アイルランドとの国境線を持つ英国も島国とは言えなくなりそうです。妥協案として「主要部が海に囲まれた国」という選択肢を作ってみましたが、このあたりが落としどころでしょうか。しかしハイチも島国と呼ばれるのであれば、辞書の定義も一考が必要かも……。
(2021年08月29日)