「辞職」は「役職についていうのは誤り。『辞任』が適切」。また「『薪』は『たきぎ』とも『まき』とも読める場合が多い」が「自然に手に入る(加工されていない)『薪』は『たきぎ』と読むことが多い」など、
明鏡 3版には校閲としても参考になる説明が追加されています。
刊行されたばかりの明鏡国語辞典第3版から、特に校閲として気になる変更点を紹介します。(画像は明鏡3版から。黄色の強調は引用者)
目次
「辞職」と「辞任」の使い分けを明記
明鏡3版で類義語の書き分けについて詳しくなりました。「書き分け」欄が設けられており、「上がる」「挙がる」「揚がる」など同音の漢字の書き分けで参考になります。同音でなくても「流出」「流失」の違いなどもあり、また、「辞職」の項にはこのように書かれています。
「役職についていうのは誤り。『辞任』が適切」。毎日新聞では、例えば閣僚が退く場合は「辞任」で国会議員を辞める場合は「辞職」と書き分けています。辞職は職場を離れ、仕事をなくすようなところが違います。
「役職についていうのは誤り」だけではわかりにくいかもしれませんが、「辞職」と「辞任」の違いについて書かれた辞書は珍しく、多くの人に参考にしてほしいと思います。
「部長から寸志を賜る」「アニメ好きの血がうずく」「人類は科学の恩恵にあやかってきた」などの言い方は誤り――#明鏡 国語辞典は言葉の正誤に詳しく、校閲者が座右に置きたい辞書の一つです。10年ぶりに改訂された第3版の狙いと特色を編集者...
「薪」の読み分け「まき」「たきぎ」
「薪」という字の常用漢字表にある読みは「シン」「たきぎ」だけです。紙面では「まき」と読む場合は仮名に直すのですが、迷うことが少なくありません。明鏡3版ではヒントが載りました。
特に「自然に手に入る(加工されていない)『薪』は『たきぎ』と読むことが多い」というところが参考になると思いました。
「どや顔」は、改まった場面で使うなら「したり顔」「時を得顔」。そんな類語が分かる「品格」欄や、慣用句「骨を埋める」を「ほねをうめる」と読んでしまうような気づきにくい勘違いを直せる「読み分け」欄など、#明鏡 国語辞典の新しい工夫につ...
「はいる」と「いる」、「ちがう」と「たがう」
また、こういった読み分けも参考になります。
「入る」
「違う」
若者がよく口にする「違くて」「違かった」「違くない」。載せる辞書も現れ、文法的に説明しようとする向きもありますが、文法上は決定的な欠陥があります。間違いは間違いと指摘することが本人のためでもあります。...
「主」について「しゅ」か「おも」かなどもあるのですが、それならば「主」について「ぬし」と読むか「あるじ」と読むかの読み分け欄もあるといいなあと思いました。ほかにも「逃」について「にがす」か「のがす」かもあるとよいかもしれません。
【平山泉】