このたび、校閲のオンライン講座を担当させてもらうことになりました。
今からちょうど10年前、新人の校閲記者として大阪本社に配属された時には、仕事や社会人生活への期待と不安に加え、こうも思っていました。「プロの記者の原稿って、そんなに直すことあるのか? やりたかった仕事だけれど、校閲ってどこまで必要?」
直すこと、ありました。考えてみれば当たり前で、新聞記者は極めてタイトなスケジュールで執筆していますから、一発で完璧な原稿ができる方が不思議なくらいなのです。また、時間的制約に関わらず、第三者の目で冷静にチェックすることの大切さもよく分かりました。他の人の目でチェックしてもらう、自分でチェックする場合も一度頭を空っぽにして、まっさらな気持ちで読み返す。これは日常の文章を校閲する際にも、最も大切なポイントではないでしょうか。
校閲には正解がないことも多い、ということも痛感しました。辞書によって書いていることが違いますし、厳格な人から比較的寛容な人まで、校閲にも性格が出ます。執筆者とコミュニケーションを取り、より良い表現を検討するのも校閲記者の仕事。駆け出しの頃は説明が下手なこともあり、なかなか意見を聞いてもらえないこともありました。信頼を積み重ね、固有名詞や数字の誤りなど致命的な誤植を拾って「恩と顔を売っておく」と、だんだん聞いてもらえるようになって……。皆さんにお伝えしても意味のない「仕事のコツ」も、いくつか心得るようになりました。
今回の講座では、校閲のポイントについてお話しした後、実際に新聞の校閲を体験していただき、間違えやすい日本語や日常の文章作成における校閲のコツについて、校閲記者の視点から何かお伝えできればと思っています。本に書いてあるような“使える”話だけでまとめてもいいのですが、せっかくの機会ですので、新聞校閲の現場の雰囲気を感じてもらえるようなお話もできればと思っています。ご参加をお待ちしています。
【植松厚太郎】