「しゅうそく」という同音の熟語の使い方について伺いました。
目次
結果はほぼ三分
新型ウイルス流行の「しゅうそく」を目指す――漢字ならどう書きますか? |
収束 36.9% |
終息 29.6% |
場合により上の二つを使い分ける 33.5% |
新型コロナウイルスの感染拡大に関連してよく使われる、ともに「しゅうそく」と読む「収束」「終息」の2語。いずれを使うか、あるいは使い分けるかはほぼ三分されました。
どちらも正しいが、意味には違いも
結論から言うと、例文のような「ウイルス流行の『しゅうそく』を目指す」という形であれば、いずれかを使うことで間違いになるということはまずありません。個人の判断で、使いたい方を選んで構わないと考えます。
毎日新聞用語集は「悪疫が終息」という用例を載せています。この例を採用している新聞社・通信社の用語集は多く、「新型肺炎の終息を宣言」のような形で載せている社もあります。この伝でいくと「終息」が正しいように見えるかもしれませんが、話はそう簡単でもありません。結局のところ「収束」と「終息」は意味の異なる言葉であって、使い分けが可能だからです。
例えば大辞泉(2版)は「収束」について「分裂・混乱していたものが、まとまって収まりがつくこと。また、収まりをつけること」と言い、「終息」は「物事が終わって、やむこと」と説明します。ウイルス流行の「収束」と言った場合には、事態は終わらないまでも混乱に収拾がつき、制御可能な状態になることを指すでしょう。最終的な目標が「終息」であることは当然です。従って、当座の目標として「収束」を目指し、究極的には「終息」を目指す、という使い方が考えられます。
自然な「終息」、人為的な「収束」
辞書編集者の飯間浩明さんはツイッターの3月12日のツイートで、「感染拡大は終息するものなのか、収束するものなのか」について、やはり「結論を言えば、どっちでもいい」と記しています。「意図しておさめる感じを出したい場合」は「収束」、ブームは「終息」ではないか、とも。「終息する」は自然に下火になって消えてしまう感じでしょうか。
感染拡大は終息するものなのか、収束するものなのか。終息は「やむ」こと、収束は「(広がったものなどに関して)おさまる/おさめる」ことで、結論を言えばどっちでもいい。意図しておさめる感じを出したい場合は「収束」ですかね。ブームは「終息」でしょうね。〔続く〕 pic.twitter.com/5nH6gAKh6M
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) March 11, 2020
一方で「収束する」は、自動詞・他動詞の両方として使われます。「事態が収束する」だけでなく「(人が)事態を収束する」という形も取り得るということです。自動詞のみの「終息する」に比べると、「収束」の方が人為的なニュアンスを帯びます。政策や指導によって事態をおさめる、おさめよう、という場合には「収束」が選ばれることになるでしょう。
「終息」しても再発することも…
新型コロナウイルスの感染拡大は、東京オリンピックの1年延期を強いるなど、私たちの身の回りにも大きな影響を及ぼしています。とにかくまずは爆発的な感染を防いで、事態を「収束」に向かわせることが望まれます。そのうえで患者のいない状態に至り、感染症が「終息」してほしい。
ただし、回答から見られる解説でも触れましたが、コンゴ民主共和国のエボラ出血熱は、2018年7月に同国北西部の赤道州で5月に発生、7月に終息を宣言したものの、8月には同国東部の北キブ州で流行が宣言されています。「終息」しても再発するというのであれば、それは「終息」なのかどうか。
コロナウイルスの場合も世界中に感染が拡大してしまっている以上、こちらで「終息」したつもりでもあちらでは流行中ということが起きうるでしょう。3月28日の安倍晋三首相の記者会見でも「感染終息」についての見通しは語られませんでした。当面はやはり、国内での「収束」を目指す、というのが表現としても中心的なものになりそうです。
(2020年03月31日)
新型コロナウイルスの感染拡大が続きます。流行のやむことを願うばかりです。
感染症の流行があると、新聞は事態が解決することについて「収束」ないし「終息」の語をよく使います。毎日新聞の記事データベースを検索すると、今年1月1日~3月7日の記事において、「コロナウイルス」と「収束」が同時に出てきた記事は57件、「コロナウイルス」と「終息」では32件がヒットします。
「収束」は、例えば政府の専門家会議が2月下旬に出した「これから1~2週間が拡大か収束かの瀬戸際となる」とする見解などに出てきます。「終息」の例は「ワクチンが完成した頃には流行が終息している場合もある」のようなものです。
辞書の説明によると「収束」は「おさまりがつくこと。おさまりをつけること」(岩波国語辞典8版)で、「終息」は「やむこと。終わること。絶えること」(同)。最終的な解決は「終息」のはずですが、「収束」もよく使われるのは、差し当たり事態を制御可能な状態におさめることが現実的な目標だからでしょう。
新聞・通信社の用語集には「悪疫が終息」といった例を載せているものがありますが、エボラ出血熱のように当局が「終息宣言」を出すはしから流行が再燃するものもあり、簡単に「終息」を使えるものでもないように思います。状況によって使い分ける言葉だと思いますが、いかがでしょうか。
(2020年03月12日)