
今年の質問始めは「新年あけましておめでとうございます」という賀詞についてでした。
目次
ほぼ半々に分かれる
| 「新年あけましておめでとうございます」――これはダメ? |
| 問題ない 47.1% |
| 「新年」「あけまして」のどちらか不要 52.9% |
「新年」「あけまして」のどちらかが不要、とはよく言われますが、「問題ない」とほぼ半々という結果になりました。
年賀状のマナーとしては間違い?
実は、三省堂国語辞典8版では「新年」の項で「『新年明けましておめでとう』という言い方は問題ない」とあります。
しかし例えば、郵便局のウェブサイトのコラム「年賀状の書き方完全ガイド:表面・裏面のマナーと注意点」にはこんなことが書かれています。
・「新年あけましておめでとうございます」は「新年」に「年が明ける」という意味があるので間違った使い方です。「あけましておめでとうございます」や「新年おめでとうございます」にしましょう。
同じく郵便局のコラムで「ビジネスで出す年賀状 やってしまいがちな失敗例」にもこうありました。
ときおり見かける「新年あけましておめでとうございます」という賀詞も、一般的には「旧年が明けて新年になる」のだから 「新年(が)明けまして」という表現はおかしいとされています。異論もあるようですが、世間一般的には、 「新年あけましておめでとうございます」は誤った使い方とされていますので、避けるようにしたほうがよいでしょう。
結果が先に来る日本語
ここで「異論もある」というのは、こういうことだと推測できます。日本語には、順序を考えれば理屈に合わないけれど、変化の後の言葉が先に来る言葉がたくさんあります。例えば「お湯が沸いた」は現象通り書けば「水が沸騰してお湯になった」ですね。また「朝明け」という言葉をご存じでしょうか。「夜明け」と同じ意味で用いられます。「朝が明ける」も「夜が明ける」ほど頻繁には使われませんが、例えばこんな短歌があります。
大広島 炎(も)え轟(とどろ)きし 朝明けて 川流れ来る 人間筏(いかだ)
広島、長崎の二重被爆者、山口彊(つとむ)さんの歌です。原爆投下翌日の死体に埋もれる川の状況でしょう。一般に爽やか、希望といったイメージの「朝」ですが、これは「夜」よりも胸がつぶれるような絶望感に満ちています。新年から重苦しい例ですみません(でも核がもたらした光景は忘れてはなりません)。
「年が明ける」という場合も、確かに「旧年が明けて新年になる」のだから「新年明けまして」はおかしいというのは筋が通っています。しかし結果が先に来る例と捉えれば、間違いとはいえません。
「馬から落馬」的というより…
一方、「明ける」には「年が改まる」という意味があります。「明けて明治十年には」という例を岩波国語辞典が挙げているように、それ単独で年明けを表すのです。ここに「新年明けまして」は「馬から落馬」と同じような重複表現とみなされる論拠があります。
実際、岩波書店の辞典編集部に読者からこんな電話がきたことがあるそうです。
「私はね、新年あけましておめでとう、というのはおかしいと思うんです。『新年』と『あけまして』は二重の表現でしょう。新年おめでとう、でいいと思うんですよ。どうですか?」
広辞苑担当の平木靖成さんは「はあ、なるほど」と聞きながらも、「そんなに目くじらを立てなくても」と思うそうです。(毎日新聞2015年11月11日のコラム「辞典に正解はない」で紹介された、平木さんの講演より)
サンデー毎日連載コラム「校閲至極」でも、こんな一文がありました。
「新年明けまして」が、「年」の意味の重複した表現であると考えても、あたらしい年を迎えられたおめでたさを「重ねる」おせちの重箱にも似て、たいそうすてきなあいさつであると感じるのです。(2019年1月13日号「新年明けまして…まちがい?」)
ちなみに、郵便局のサイトにはビジネス相手への年賀状の文例として「本年もより一層のお引き立てを賜りますようお願い申し上げます」というのがあります。年賀状に関係なくよく使われる「より一層」は、意味がかぶるので「一層」だけのほうがよいと思われるでしょうか。いや、これは重複というよりは強調とみなすべきでしょう。
そう考えると、「新年明けまして」も強調表現といえるかもしれません。
自分の常識が世間の常識とは限らず
とはいえ、今回のアンケートでは半数が「新年」と「明けまして」のどちらか不要と答えていることを踏まえると、日本語として間違いとはいえなくても、少なくとも年賀状ではあえてそう書くことはないのではないでしょうか。

ただし、「新年あけましておめでとうございます」という年賀状を受け取っても、「常識がない」などと思わないように。一部ながら辞書も「問題ない」としています。多少自分の常識と違っても、出してくれる人がいるということ自体をめでたく思ったほうが気持ちよく年頭を暮らせるはずです。
今年もこのような正解の出しにくい質問をしていきます。どうぞよろしくお願いいたします。
(2026年01月19日)
新年あけましておめでとうございます。このあいさつに既に何回か接しましたか?
年賀状を出す人はどんどん減り、メールやSNSでのメッセージで済ませる人が多くなりつつあります。それはともかく「新年あけましておめでとうございます」というあいさつは不適切という見解があります。
不適切とする理由は二つ。一つは「新年が明ける」というのは文章としておかしい、「旧年が明けて新年になる」から。しかし反論も。これは「湯が沸く」と同じく結果が先に来た日本語の用法で間違いではない、と。
もう一つ、「新年」とは「年が明ける」ことだから「新年明けまして」というように同じ意味を繰り返すのは「馬から落馬」と同じく重複表現という見方があります。2026年はうま年。はたして「新年明けまして」は「馬から落馬」式表現なのかも含め考えてみたいと思います。
(2026年01月05日)
