読めますか? テーマは〈春分〉です。
目次
暦要項
答え
れきようこう
(正解率 53%)国立天文台が毎年2月に発表する翌年の暦。春分・秋分の日はこれによって確定する。今年の春分の日は3月21日。来年も21日だが、昨年などは20日だった。
(2014年03月17日)
選択肢と回答割合
こよみようこう | 33% |
りゃくようこう | 14% |
れきようこう | 53% |
此岸
答え
しがん
(正解率 72%)こちら側の岸。「彼岸」の対義語で、「この世」と同義語。仏教で、迷い・悩みの多い現実世界を指す。今年3月18日は暦要項によると「彼岸」とあるが、正確には「彼岸の入り」。彼岸は春分・秋分の日を挟んだ7日間だ。
(2014年03月18日)
選択肢と回答割合
かがん | 7% |
こがん | 20% |
しがん | 72% |
時正
答え
じしょう
(正解率 56%)昼と夜の長さが同じであること。春分・秋分と同じ意味で用いられたが、実際には春分・秋分とも昼が夜より十数分長い。なお前後逆の「正時(しょうじ)」は1時ちょうどなど、きっかりの時を指す。
(2014年03月19日)
選択肢と回答割合
きっかり | 17% |
じせい | 27% |
じしょう | 56% |
九品仏
答え
くほんぶつ
(正解率 76%)九体の阿弥陀仏(あみだぶつ)。九品とは極楽往生する者を上品(じょうぼん)・中品・下品(今の「じょうひん」「げひん」の語源)の3種にそれぞれ上生・中生・下生(げしょう)の3種を分けた階位。京都・浄瑠璃寺は九体阿弥陀如来が本尊。彼岸の中日にはその中心の裏に太陽が沈み、西方浄土を感じられるような設計となっている。
(2014年03月20日)
選択肢と回答割合
きゅうひんぶつ | 2% |
くひんぶつ | 22% |
くほんぶつ | 76% |
◇結果とテーマの解説
(2014年03月30日)
by Rubber Soul |
この週のテーマは21日の春分の日にちなんだ4語でした。
「暦要項」が最も低い正解率となりました。3択でも半分ちょっとという数字ですから、ルビがないと「こよみようこう」と読む人がもっと多くなるのではないでしょうか。なお、職場の辞書数冊をみる限り、この言葉を載せる辞書はありませんでした。国立天文台が発表する専門用語で、一般的には使用されないという判断かもしれません。が、これによって翌年の春分・秋分の日が確定するという、国民生活に密接にかかわる文書ですので、少なくとも百科事典の機能を有する辞書にはあってもおかしくないと思います。
その暦要項では3月18日が「彼岸」となっていますが、正確には「彼岸の入り」だと「此岸」の出題時の解説で記しました。ただし国立天文台としては、1日だけではなくてもその期間の始まりのみを記す方針なのかもしれません。似た例でいうと、暦要項には今年の夏の「土用」は7月20日とありますが、正確には立秋の前の18日間を指します。
「時正」は歳時記で見つけた言葉で、今ほとんど使われないせいか56%の正解率にとどまりました。逆の「正時」も以前出題したところ46%と芳しくありませんでした。「正」が時を表す場合は「正午」のように「しょう」という読みになると覚えておいたらいかがでしょう。
「九品仏」はこの週で最も正解率が高くなりました。解説で記したのは京都・浄瑠璃寺のことですが、ツイッターの反応をみると東京の東急大井町線「九品仏駅」がよく知られているようです。
東京の「九品仏」は浄真寺という寺の通称で、九つの阿弥陀如来像が安置されていることに由来します。そして同様に九体阿弥陀如来を有するのが浄瑠璃寺。三重塔と池と阿弥陀堂の配置が「東から登った太陽が此岸である池を通り、彼岸の西に沈んでいく」(淡交社「浄瑠璃寺」の立松和平の文章)という浄土思想を表す寺です。しかし阿弥陀如来が九体もあるのはいいのですが、「上品」「下品」の語源となった階級があるのはいかがなものでしょう。阿弥陀さまはすべての人を平等に救ってくださるのではないのですか。
玄侑宗久「さすらいの仏教語」(中公新書)にはこうあります。《救済の幅が狭いうちはそういう理想も言えるだろうが、「すべて」を救うとなると、必ずこういう差別をつくるのが人の世である》《自分では上品だと思っている人々が、あいつらと同じ所じゃ堪らないと、考え出したスタイルなのだろう》。そもそも浄土思想は平安貴族の間で自分たちだけ救われたくてはやったもの。ただ、そうやって平安貴族の差別意識や視野の狭さを指摘しても、浄瑠璃寺の美しさの前では無意味という気がします。立松和平さんも記します。《この九体阿弥陀如来像がすぐ間近に迫ってくるようである。このどこかに自分は引っかかりますようにと、救いの網の目を広げてつくったようにも感じられる》