「エグい」の使い方についてうかがいました。
目次
「プラス」「プラスにも取れる」で4分の3に
このデザイン「エグい」――どんな意味にとれますか? |
どぎついといったマイナスの意味 19.4% |
並外れていてすばらしいといったプラスの意味 22.3% |
プラス・マイナスどちらの意味にもとれる 53.7% |
どちらでもない、意味がわからない 4.6% |
「プラスの意味」「プラス・マイナスどちらの意味にもとれる」合わせて76%の人が、プラスの意味があることを認めています。やはりプラスの意味もかなり浸透しているようです。また単純比較はできませんが、「マイナスの意味」「プラスの意味」の二つの選択肢に絞ってみると「プラスの意味」と捉える人の方が多く、出題者としては意外な結果になりました。
「どぎつい」の意味も実は新参
「エグい(えぐい)」を辞書で引くと「①あくが強くて、口の奥がいやな感じ/味だ②あくどく思いやりがない。ひどい③〔俗〕どぎつく、気味が悪くなるようすだ」(三省堂国語辞典8版)と、マイナスの意味が並びます。「④〔俗〕すごい。すばらしい」(同)のようにプラスの意味を載せている辞書は少数でした。
出題時には触れませんでしたが、実は選択肢にあった「どぎつい」の意についても「俗用」だとする辞書の方が多いです。2003年3月31日付の毎日新聞コラム「余録」では、「えぐい」について「『大辞林』には、『あくが強くてのどを刺激するような味や感じ』とある」とし、
「えぐい」という言葉には、「気が強い」「思いやりがない」といった意味もある。そして今やインターネットなどでは若者たちが「どぎつい」「えげつない」といった意味でも使っている。
と、「どぎつい」の意での「えぐい」は若者言葉だとしています。今では辞書での採用率は高いですが、20年前は辞書にも載っていませんでした。時代を経てどんどん意味が派生していった言葉のようです。
毎日新聞の過去記事を見てみると、「どぎつい」の意での「えぐい(エグい、エグイ)」が初めて登場したのは1991年、外部筆者のコラムでした。一方「すごい、すばらしい」の意では1995年と意外にも初登場は早め。「エグいギター・ワーク」という表現で登場しました。ただこちらの意味はやはり用例が少なく、この後も数件登場しますが取材先の発言の中で使われることがほとんどでした。
「すごい」よりすごい表現へ
「やばい」と同様、「ひどい、信じられない」といったマイナスの意味からプラスの意味にも派生し、「信じられないほどすごい」のようなニュアンスがあることから、ただ「すごい」よりもさらに程度がはなはだしいことを示す、などの理由で使う機会が増えているのかもしれません。新聞紙面において、発言以外で「すごい、すばらしい」の意での「えぐい」が登場することはまだあまりなさそうですが、浸透度を考えると今後目にする機会が増える表現ではあるでしょう。
(2023年03月02日)
「突破の仕方がエグい」――。日本でも大きな盛り上がりを見せた、昨年のサッカー・ワールドカップ。元日本代表の本田圭佑さんの解説が話題となりましたが、冒頭に挙げたのはその一節。フランス代表のエムバペ選手が決勝戦で見せたプレーに放った一言です。ここでの「エグい」は「すごい、すばらしい」といった意味で使われていると考えられます。▲しかし「エグい(えぐい)」を辞書で引くと「①あくが強くて、口の奥がいやな感じ/味だ②あくどく思いやりがない。ひどい③〔俗〕どぎつく、気味が悪くなるようすだ」(三省堂国語辞典8版)など、マイナスの意味ばかりが出てきます。ただ、三省堂国語辞典は2022年1月に発売したこの8版で「④〔俗〕すごい。すばらしい」という説明を新たに加えました。▲辞書でも俗用とされており、新聞紙面にはほとんど出てこない用法ですが、取材先の発言として「(打球を)飛ばす力がえぐい」などの形で紙面化した例があります。個人的には、若者言葉とされる「やばい」と同様にプラスの意味もかなり浸透しているのではないかと思いますが、辞書に新しい用法が載って1年がたったこの機会に一度うかがってみたいと思います。
(2023年02月13日)