「呉越同舟」という四字熟語についてお聞きしました。
「呉越同舟」は「協力する」35%
四字熟語「呉越同舟」をどういう意味で使いますか? |
仲の悪い者が同じ場所に居合わせる 52.2% |
仲の悪い者同士が協力する 34.9% |
どちらの意味でも使う 12.9% |
どれを選んでも正解、という質問でしたが、多数派は仲の悪いものが「居合わせる」という意味で使うと回答。「協力する」という意味で見出しを付けた整理記者が、使い方に疑問を持ったのも理由がないわけではありませんでした。
この言葉の出典は、古代中国の兵法書「孫子」。元になった箇所を現代語訳すると「呉と越とはもともと仇敵(きゅうてき)同士であるが、たまたま両国の人間が同じ舟に乗り合わせ、暴風にあって舟が危ないとなれば、左右の手のように一致協力して助け合うはずだ」(守屋洋著「孫子の兵法がわかる本」三笠書房)。というわけで仲の悪いものが「居合わせる」「協力する」両方の意味が含まれるのです。
実は出題者は「呉越同舟」を史実に基づいた故事成語だと思い込んでいましたが、仮定の話だったのですね。同書によると「呉越同舟」は「現在では、たんに仲の悪い者同士が同じテーブルにつくといった意味で使われる」が、もともとは兵士を「一丸として戦わせるにはどうすればよいか」という観点から孫子が挙げた例えなのでした。
ちなみに「成語林」(旺文社)には類語として「楚越同舟」という四字熟語も載っていました(「楚」も「呉」「越」同様、春秋戦国時代の中国の国)。周りに敵が多く大変な時代だったことが言葉からもうかがえます。
(2018年04月03日)
エジプトとイスラエルがテロ対策で協力するという記事に「呉越同舟」と見出しをつけた整理記者から「この言葉、敵同士が一緒にいるっていうだけじゃなくて、協力するという意味で使ってもいいんだっけ? ネットで誤用が多いって書かれているけど」と尋ねられました。
辞書には両方の意味が載っていますし、むしろ「仲の悪い呉の国の人と越の国の人が同じ舟に乗った時、嵐の中では助け合う」という話が由来ですから、敵同士が協力するという意味で使うのは故事に沿っていると言えるでしょう。
単に「出身の異なる人が一緒にいる」という意味での「呉越同舟」の使用はこの言葉の成り立ちからして適切ではありません。
(2018年03月15日)