読めますか? テーマは〈重量と体積〉です。
目次
貫目
かんめ
(正解率 65%)昔の重さの単位「貫」と同じ意味。1貫=3.75㌔。夏目漱石の小説「二百十日」に、体重が「何貫目あったって大丈夫だ」というせりふがある。
(2015年08月31日)
選択肢と回答割合
かんめ | 65% |
かんもく | 16% |
ぬきめ | 19% |
幾万斛
いくまんごく
(正解率 31%)「斛」は昔の体積の単位で「石(こく)」と同じ意味。1斛は100升。夏目漱石「二百十日」に「噴火孔から吹き出す幾万斛の烟(けむ)り」と阿蘇山の描写がある。ちなみに今日は立春から210日目に当たる「二百十日」だ。
(2015年09月01日)
選択肢と回答割合
いくまんごく | 31% |
いくまんと | 46% |
いくまんとん | 23% |
分銅
ふんどう
(正解率 99%)はかりで目方を量るときに用いる金属の重り。昔は重さの単位の一つとして分(ふん)が使われた。1分は0.375㌘。分銅は弥生時代の遺跡からも発見されている。
(2015年09月02日)
選択肢と回答割合
ふどう | 0% |
ぶどう | 1% |
ふんどう | 99% |
斤量
きんりょう
(正解率 81%)量った物の重さ。斤は昔の重さの単位(1斤=600㌘)だが、今は主に「食パン1斤」の形で使う。斤量は競馬用語としては、馬が背負う騎手や馬具などの負担重量のこと。
(2015年09月03日)
選択肢と回答割合
きんりょう | 81% |
しんりょう | 0% |
せきりょう | 19% |
千鈞
せんきん
(正解率 68%)鈞は重さの単位で1鈞は30斤。「千鈞の重み」は非常に重いこと。価値が高い意もあるので「値千金」と混同してか「千金の重み」という表記が散見される。
(2015年09月04日)
選択肢と回答割合
せんきん | 68% |
せんく | 5% |
せんじゃく | 27% |
◇結果とテーマの解説
(2015年09月13日)
この週は「重量と体積」がテーマ。9月1日が雑節の「二百十日」なので、それにちなんで夏目漱石の小説「二百十日」をパラパラめくっていて「斛」という見慣れぬ文字に出合いました。
噴火孔から吹き出す幾万斛の烟(けむ)りは卍(まんじ)のなかに万遍なく捲(ま)き込まれて、嵐の世界を尽くして、どす黒く漲(みなぎ)り渡る。
阿蘇山の描写です。国語辞典を引くと、どうも「斛」は「石(こく)」と同じ意味として使われたらしいけれど今ひとつはっきりしません。「日本大百科全書」(小学館)にはこうありました。
石 こく 尺貫法の体積の単位。一〇斗(一〇〇升)をいう。一八〇・三九㍑にあたる。古代中国の相当する単位は斛(こく)で、石(せき)は質量の単位であったが、日本では固有の単位さか(斛)に近いこの石の音を借りてこの文字が用いられるようになった。
ははあ、昔は「石」は今グラムなどで表す質量(重量)、「斛」はリットルなどで表す体積(容積)だったのか。だから漱石は煙の形容としては「斛」の字が適切として「石」を使わなかったのかもしれません。しかし今は難読で、今回最低の正解率となりました。
斛の引用の部分の近くには次のせりふがあります。
僕の身体(からだ)は十七貫六百目あるんだから
1貫=3.75㌔ですが「目」とは? 目という単位はないようです。「貫目」も単に「貫」と同じ意味で用いられて「目」にあまり意味はなさそう。しかし「六百目」となると何かの単位として見る方がよさそうです。1貫=1000匁(もんめ)ですから、ここでは「匁」の代わりに「目」が使われているのかもしれません。そのつもりで計算してみますと、
17.6×3.75=66(㌔)
となり男性の体重として無理がないことがわかります。いやはや、漢字のブログなのにとんだ算数の問題になってしまいました。しかし匁ももとは「文目」から来ていますから「目」の字とは切っても切り離せないのです。
さて「分銅」はほとんどの辞書が「ふんどう」としていますが、日本国語大辞典は「ぶんどう」も許容しているので選択肢にできませんでした。
「斤量」は競馬関係の常用語ですが、辞書でその方面の意味を記しているのは「大辞泉」しか見つかりませんでした。辞書を編む人には競馬に関心がない人が多いのかも(そういう問題じゃないか)。なお競馬に関係ない人も「パン1斤」はよく知っていると思いますが、1斤=600㌘なのに大辞泉によると食パンの単位としては「1斤は350~400グラムをいう」。計算通りにはいきません。
「千鈞」は「千金の重み」という表記が何度か出ているので、重さとしては「千鈞」が適切でしょうという注意喚起のために出題しました。
「二百十日」に話を戻すと、これは2人の男の会話が中心の、漱石の小説の中でも軽めの中編ですが、時々挿入される阿蘇山の描写がどっしりとした重みをもたらします。同僚は「漱石の作品の中で一番好き」と言っています。来年は漱石没後100年。読書の秋に、比較的軽いものから読み直していってはいかがでしょう。