国境を「こえて」を漢字でどのように書くか、うかがいました。
目次
「いずれも『越』」が最多
「徒歩で国境を『こえて』移動する/国境を『こえて』お金が動く」――それぞれ『こえて』はどう書きますか? |
いずれも「越えて」 57% |
いずれも「超えて」 0.6% |
前者は「越えて」、後者は「超えて」 41% |
前者は「超えて」、後者は「越えて」 1.4% |
「徒歩で国境を『こえて』移動する」「国境を『こえて』お金が動く」のいずれも「越えて」を使うとした人が最多となりました。前者は「越えて」、後者は「超えて」の組み合わせを選んだ人がそれに続き、「徒歩で国境を『こえて』移動する」についてはほとんどの人が「越えて」を選ぶという結果になりました。
「超=上下/越=水平移動」という意識
「超越」という熟語があることからも分かるように、「越」と「超」の意味は似通っており、両者を明確に使い分けるのは難しいです。いずれの漢字を使っても問題ないというケースも多いのですが、どちらの方がより適切だろうかと校閲記者は日々悩んでいます。
その際に参考にしている毎日新聞用語集の用例を紹介します。
こえる・こす
越〔通り過ぎる、年月を経る、越権〕買い越す、垣根を越える、勝ち越し、悲しみを越えて生きる、K点越えのジャンプ、権限を越える、国境を越えて亡命、三段跳び・走り幅跳び・棒高跳びで○メートルを越す、峠を越える、度を越した冗談、難関を乗り越える、…に越したことはない、野越え山越え、八十の坂を越した父、引っ越す、冬を越す、分を越えて、見越す、持ち越す超〔上に出る、超過〕基準を超える、国境を超えた愛、10万人を超す、制限量を超える、定員を超える、党派を超えて、20年を超える年月、能力を超える、80歳を超える、目標を超す額、予想を超える
注:「勝ち越し」「乗り越える」などのように他の動詞と複合する場合には原則として「越」
同じ「国境をこえる」でも「国境を越えて亡命」「国境を超えた愛」と二つの用例が載っており、文脈に応じて「越」と「超」を使い分ける必要が出てきます。
「越」は「通り過ぎる」という意味を持ち、主に水平方向の移動に用いられます。一方の「超」は、「超過」のように「ある基準よりも程度が上になる」(円満字二郎さん著「漢字の使い分けときあかし辞典」)ことを表し、上下の方向が意識されます。そのため、「国境を越えて亡命」であれば、国境線を越えて別の国へと移動することを示し、「国境を超えた愛」であれば、国境という線引きよりもさらに上へ=国境など関係なく、といった意味になります。
「お金」は場面を想像して使い分けを
では、質問文のようなケースはどうでしょうか。「徒歩で国境を『こえて』移動する」は「徒歩で」とあるので、実際の国境線をまたいで移動すると考えられ、水平方向の移動を表す「越」の方がふさわしいと言えるでしょう。
「国境を『こえて』お金が動く」については、どのような場面を表しているかで判断が分かれそうです。例えば2国間の貿易であれば、「国と国の間の境をまたいで」という意味で「越」だと考えられます。一方、インターネット上の取引や、世界規模のビジネスなどについて触れているのであれば、「国境という枠を取っ払う」と考えて「超」と書くこともできるでしょう。
「国境をこえる」については、国境線をまたぐという意味なのか、それとも国境という枠に縛られないという意味なのかで書き分けるのがよいと思います。
(2022年01月21日)
「越える」と「超える」――。いつも使い分けに悩まされることばの代表格です。「乗り越える」「100人超え」のように、ある程度表記が定まっているものもありますが、「越」と「超」の字義が似通っているため、どちらを用いても構わないのだけど……という例も多くあります。▲「国境をこえる」もその一つです。一方の表記に統一することはできず、日本新聞協会の新聞用語集では「国境を越えて亡命」「国境を超えた愛」という用例を載せています。どちらの方がふさわしいかを文脈から考えなければなりません。▲大まかに言うと、「越える」であれば実際の国境線を越える、「超える」なら国を隔てる境に関係なく、というように分けられるでしょうか。それゆえ「徒歩で国境を越えて移動する」「国境を超えてお金が動く」とするのがベストかなと思うのですが、みなさんはどうですか。
(2022年01月03日)