「大地震」の読み方について伺いました。
「大地震」は「おおじしん」やや優勢
私たちの暮らしに深刻な被害をもたらす地震。「大地震」をどう読みますか? |
おおじしん 54.9% |
だいじしん 45.1% |
半々に近い結果でしたが、「おおじしん」がやや優勢でした。
回答から見られる解説でも紹介したNHKの調査では「だいじしん」と読む人が77.6%を占めたとのこと。NHK放送文化研究所のウェブサイトでは「しだいに[オー]よりも[ダイ] と言う人が増えている」としていました。しかし今回は「おおじしん」が踏みとどまっていると言うにとどまらず、むしろ多くなっています。
もちろん、このウェブサイトでのアンケートは客観的な調査とは言えません。回答した人は校閲グループのツイッターをフォローしてくださっている人が多いだろうと思いますが、そもそも言葉に関心のある人でなければ校閲のツイッターなど読まないはずです。それを踏まえて言えることは、言葉に関心のある人の間ではある程度、大地震は「おおじしん」と読む、という考え方が共有されているということでしょうか。
NHKの「ことばのハンドブック 第2版」(2005年)では「オージシン」という読みを採用していますが、囲み記事をもうけて「大」の付く言葉について少し詳しく説明しています。
「原則として、『大』の後に『漢語』(音読みの語)がくると〔ダイ〕、『和語』(訓読みの語)がくると〔オー〕だとされている」といいますが、地震はもちろん漢語です。それについて「『地震』ということばは、かつては『雷』『火事』と並ぶ日常的な“準”大和ことばだった。(中略)従来、慣用的に〔オー〕と読むことになっている」と説明を加えています。
「“準”大和ことば」というのは理屈としてどうなのか、とは思いますが、確かに「大火事」は「おおかじ」と読み、「だいかじ」と読む人はありません。日常語には「おお」が付く方がしっくりくるということでしょうか。結局「慣用」というのが判断の根拠になるようです。
少し古いですが文化庁の「ことばに関する問答集1」(1975年)では、やはり「大地震」を取り上げた一節で、音読みの語に付く「大」が「おお」と読まれる例を挙げています。「大げさ(袈裟)、大げんか(喧嘩)、大御所、大火事、大騒動、大時代、大道具、大所帯、大入道、大ぶろしき(風呂敷)、大掃除」がそれですが、こちらでも「『大』を『ダイ』と読むか、『おお』と読むかについては、規則性があるとは思われず、多分に慣習的である」とやや投げ出すような雰囲気です。「大地震」については「いわゆる『ゆれている語』」とし、どちらかを正解とするのを避けています。今回のアンケートでも結果が半々に近い形になったのも、無理のないことと言えそうです。
ところで、一般的な「大きい地震」については以上の通りなのですが、辞書で「だいじしん」を引くと、別の定義も載っています。
だいじしん【大地震】マグニチュード七以上の地震。それより小さいものに中・小・微小などの地震がある。広辞苑7版
これは「ちゅうじしん」や「しょうじしん」に対応する「だいじしん」です。日本地震学会のウェブサイト(→こちら)によると、マグニチュードの大きさで呼び方が変わります。大・中・小とあるならやはり「だい」でなければ都合が悪いでしょうし、地震の揺れや被害ではなく現象の大きさに着目した呼び方ですから(この呼び方だと先の大阪北部地震=マグニチュード6.1=は「中地震」になります)、日常語とは切り離して考えた方がよさそうです。
(2018年07月10日)
どちらかが正解、という問いではなく、言葉の使われ方を伺うアンケートです。
NHKの「ことばのハンドブック 第2版」の「大地震」の項には「○オージシン ×ダイジシン」と記載されており、読み方が「おおじしん」に統一されていることが分かります。
もっとも、だからといって「おおじしん」が正しい、ということではなさそうです。明鏡国語辞典(2版)は「古くから『だいじしん』『おおじしん』ともに使われる」といい、日本国語大辞典(2版)は「だいじしん」の項で「サントスの御作業」(キリスト教宣教師らによる書物、1591年)から「daigixin (ダイヂシン)」を引いています。「だいじしん」も古くから使われているということで間違いなさそうです。
NHK放送文化研究所のウェブサイトによると、1995年にNHKが行った「ことばのゆれ」全国調査では「だいじしん」と読む人が77.6%を占めたそうです。同サイトでは「しだいに[オー]よりも[ダイ] と言う人が増えている」としていますが、今回の結果はどうなるでしょうか。
(2018年06月21日)