笑顔の表現について伺いました。
目次
9割近くは「違和感あり」
笑う表現として「口角が緩む」というのはどうですか? |
違和感はない 12.1% |
違和感はあるが許容範囲 20.1% |
違和感が強い。「口元が緩む」などとしたい 67.8% |
「口角が緩む」という表現に「違和感はない」という人は1割強にとどまり、かなりの人が「違和感がある」との回答でした。出題者はこの表現にちょっと考え込んでしまったのですが、直しを出したのは皆さんの感覚にも沿っていたようで、ホッとしました。
「緩む」なら「口元が~」
一般的な「口元が緩む」という表現は、喜びを隠しきれずほほ笑む、笑顔になることを指します。「緩む」というのは、しまる力が弱くなるということです。実際に口まわりの筋肉に意識を向けて動かしてみるとわかりますが、ついニヤッとしてしまいそうになるのをこらえるには、奥歯をかみしめて唇をかたく引き締めると思います。緩んでしまわないように、口元にかなり力が入った状態といえますね。出題者は外出中に推しのポスターを目にしたりするとよくこの顔になります。
では「口角」はどうでしょうか。口角という単語を使った笑顔の表現には「口角があがる」があります。口角をあげるためには頰の筋肉に力を入れる必要がありますから、これを「緩める」となると真顔になってしまいます。「口角が緩む」は笑顔を表現するのには適さない表現だということがわかります。
「笑顔」は「こぼれる」?
笑顔にまつわる表現では、決まり事があるものもあります。たとえば「笑顔がこぼれる」。言いたいことはわかるけれど……うーん、と思いませんか? 毎日新聞用語集では「笑みがこぼれる」とするように案内しています。
具体的に考えてみると、「笑顔」は顔全体を指す表現です。この場合の「こぼれる」は「表情などがあざやかに外へ現われる」(日本国語大辞典2版)という意味ですが、顔からさらに顔が「こぼれる」というのは想像するとちょっと変な感じがします。顔から「笑み」がこぼれる、ならば納得がいきます。
鏡の前で試してみては
このように表現ひとつで、さわやかなはずの情景が変なものになってしまうことも。顔の表現や身体表現については、自分でやってみることで違和感に気づけることがあります。なんか変だな、と思った時は、ぜひ鏡に向かって実際に体を動かしてみてください。
(2021年07月16日)
スポーツ面の記事では、記者は選手の喜怒哀楽を読者に伝えるため多様な表現を駆使します。他の面ではそこまで出てこないような表現も頻出するのですが、たまに「おや?」と妙な気持ちになる出合いも。
「口角が緩む」もそのたぐいで、はじめは違和感を持たずに読んでいたのですが、後から「口角って上下するんじゃなかったっけ?」「緩んだら下がってしまうのでは……」と疑問がじわじわ。口元が緩むと言うのだから、口角でもダメとは言えないのでは?とひとしきり悩みましたが、結局「口元が緩む」と一般的な表現に。ただの独り相撲で、実は許容範囲だったのでしょうか?
(2021年06月28日)