「のびる」という語の表記について伺いました。
目次
全体としては使い分けられている
駅伝の区間距離が/ミサイルの射程が「のびる」――どう書きますか? |
いずれも「延びる」 25.9% |
駅伝は「延びる」、ミサイルは「伸びる」 43.9% |
駅伝は「伸びる」、ミサイルは「延びる」 10.7% |
いずれも「伸びる」 19.6% |
最多だったのは、駅伝の区間には「延びる」、ミサイルの射程には「伸びる」と使い分ける選択肢でした。どちらの表記でも意味が通じる場合は多いのですが、回答を総体としてみると使い分けの意識が浸透しているように感じます。
区間は「延びる」、射程は「伸びる」が優勢
回答自体を見ると、使い分ける選択肢をとった人は54.6%で半分強なのですが、回答を整理し直すと「延びる」と「伸びる」の間で使い分けがなされているように見えます。
「駅伝」と「ミサイル」それぞれで分類し直すと以下のようになります。
・(駅伝の区間距離が)延びる/伸びる 69.8%/30.3%
・(ミサイルの射程が)延びる/伸びる 36.6%/63.5%
駅伝の方は7割が「延びる」、ミサイルの方は6割以上が「伸びる」と、いずれも3分の2前後の意見がまとまった格好になります。回答の際に見られる解説で書いた、出題者が何となく持っている感覚と一致しており、まずはホッとしています。
「点の移動」か「長さ」か
辞書編集者の円満字二郎さんは「漢字の使い分けときあかし辞典」(研究社)で「のびる」と訓読みする漢字について「《伸》と《延》は、『延伸』という熟語があるように、意味がとてもよく似ていて、使い分けが難しい」としています。その上で、この二つの違いについて「《延》は、基本的には“端が移動する”という“点の移動”のイメージを持つ。それに対して、《伸》は“長さ”に関心があるところが異なる」とします。
駅伝の区間距離の場合は、中継点が移動したということだから「延びる」がなじむでしょう。一方でミサイルの射程という場合には、その飛距離、航跡の長さがイメージされるので「伸びる」の方がなじみやすいと言えそうです。
使い分けの方針を決めておきたい
「延びる」と「伸びる」は、どちらを使っても意味は通じるので、あまり厳密な使い分けは意識されないかもしれません。ただし、ある程度の基本的な方針を決めておくと文章を書く時に迷う場合が減ると思います。今回の質問のように、いずれも距離について使う「のびる」であっても使い分けの意識が働いていることは参考になるのではないでしょうか。
(2020年01月15日)
基本的には「長くなる」という意味を持つ「のびる」は、漢字交じりにすると「延びる」「伸びる」の二つの書き方があり、いずれにするか迷うことがあります。どちらを書いても意味は通じる場合も多いのですが、最近迷った2例を挙げてみました。
毎日新聞用語集にはもちろん使い分け方が載っています。「のばす・のびる・のべる」の項目にいわく「伸〔縮の対語。背伸びする、まっすぐになる〕/延〔延長。広がる、時間をのばす、遅れる〕」。「伸」には運動性を感じる一方で、「延」には時間的・空間的な広がりのようなものを感じます。
距離に関する用例を見ると「飛距離を伸ばす」とあり「地下鉄が郊外に延びる」とあります。スキーのジャンプで2回目の方が長い距離を飛んだなら「飛距離を伸ばした」と言いそうです。地下鉄の方は2通りの解釈が可能で、「路線の距離が延長される/地下鉄が郊外にまで広がっている様子」のどちらとも取れますが、いずれも「延」がしっくりきます。
駅伝の区間の場合は「延長」とも言いそうなので「延」か。しかし射程の場合はミサイルを改良して飛距離を長くすると考えられ、「伸」を使いそうに思います。皆さんはどう書くでしょう。
(2020年12月24日)