配達された郵便物を入れる箱のことを何と呼んでいるかうかがいました。
目次
「郵便受け」は8割が、「ポスト」も5割が使用
家庭に配達される郵便物が入る物を何と呼んでいますか? |
郵便受け 48.1% |
ポスト 19.9% |
上のいずれも言う 31.9% |
結果は「郵便受け」が最多というものの、「ポスト」「郵便受け」のいずれも言うとの回答を含めると「ポスト」容認派が半数をわずかに超えました。
辞書の多くは「ポスト」に「郵便受け」の意を付記
きっかけとなったのは、注文した覚えがないマスクが家に届いていたという記事です。悪徳業者の送りつけ商法か、と注意を喚起する内容でした。
ふと気になったのは、マスクが家の「ポスト」に入っていたという記述です。ポストというと、郵便物を出すとき入れるあの赤い箱を指すのではないだろうか、という疑問が湧きました。
実はその時校閲していたのは、小学生向けの「毎日小学生新聞」でした。それで最初に引いた辞書は小学生向けの辞書「新レインボー小学国語辞典」(改訂4版、学研)。「ポスト」には「ゆうびん物を出すときに入れるはこ」とあります。次に岩波国語辞典(8版)を開くと「郵便ばこ。特に、郵便物を出すためのもの」とあります。
そこで協議の上「郵便受け」と直すことにしました。しかし後で他の辞書を見ると、別の小学生向け辞書も含め「ポスト」に郵便受けの意味を付記しているものの方が圧倒的に多いことが分かりました。余計な直しだったのだろうかと困惑しました。
日本郵便の正式名称は「郵便受箱」
そこで日本郵便に問い合わせてみました。広報によると「弊社の郵便約款にのっとり、配達先の箱については『郵便受箱』、郵便物をお出しいただく際は『郵便差出箱』と呼称しております」とのこと。
つまり「ポスト」というのは郵便物を出す、受けるに関係なく、正式名称ではないのです。ただ、一般利用者のわかりやすさを考慮し、「郵便差出箱」を「ポスト」、「郵便受箱」を「郵便受け」と表記している場合もあるとのことでした。
配達先を「郵便受け」と直したのはその意味ではやはり適切だったようです。もっとも、一般の方がポストと言うのを不適切とみなしているわけではない、と広報の方は補足していましたが。
確かに、一般的に郵便受けのことをポストと言ったところで、何ら誤解は発生しないかもしれません。「手紙が来ているか気になって何度もポストを見に行った」という文を読む人が「ポスト? 手紙を出すための箱まで行っても何も確認できないだろうに」と変に思うことはほとんどないでしょう。
やはり「郵便受け」が無難
しかし、配達された郵便が入るのは「ポスト」ではなく「郵便受け」だという選択を約半数の人がした今回の結果は無視できないと思います。つまり、郵便受けのことをポストと書いても間違いではないし、さほど実害もないでしょうが、出題者がふと気になったように、本当は郵便受けと書くべきじゃないかと思う人はある程度いると考えられます。郵便受けとしておけばそうした違和感を覚える人はいないので、その方が無難だというわけです。
以下は余談です。郵便を出す「ポスト」は正式名称ではないけれど、日本郵便としてはわかりやすさも考慮し使うこともあるとのこと。これに対し、「アベノマスク」はわかりやすい通称ですが不可としているようです。群馬県太田市が不要なアベノマスクの寄付を呼びかけたところ、応じた郵便局の寄付箱が日本郵便の指示で撤去されました。郵便局の広報文「市のアベノマスク寄付受け付けに協力します」のアベノマスクの呼称が問題とされたとか。
ううむ、アベノマスク、いけませんかね。「政府支給の布マスク」などよりよほど気が利いていると思うのですが。政府といっても安倍晋三首相しか着けているのを見かけませんし……。
(2020年06月26日)
「アベノマスク」、もう届きましたか? 政府支給の布マスクが今さらながら届いたという人の話が聞かれるようになりました。また、差出人不明で身に覚えのないマスクが来たという不思議なニュースもあるようです。そして少なからぬ記事で、玄関付近にある、郵便物の入る箱が「ポスト」と書かれています。
待てよ、ポストというと郵便を出す時に使う赤い箱のことじゃないだろうか、届いた物を入れるのは「郵便受け」ではないか――と思い辞書を引くとさらに戸惑いました。ポストは郵便受けを含む意味とする辞書と、そうは明記していない辞書があるのです。
ポストの意味としては、例えば広辞苑7版に「郵便箱。また、郵便受け」とあるように「郵便受け」としても使えるとするものが多いのですが、岩波国語辞典8版は「郵便ばこ。特に、郵便物を出すためのもの」と記し、郵便受けという記述はありません。皆さんの受け止め方はどうでしょうか。
(2020年06月08日)