今回と次回の2回にわたり、2017年7月6日に東京・竹橋で行われた記者報告会「校閲の仕事」の主な内容をご紹介します。
新聞校閲の仕事とは?
新聞社における校閲部門の位置付けは、いわば「品質管理部門」と言えます。
新聞社の商品である「原稿」「新聞」について、誤りのない正確な情報を読者の元へ届けるためにチェックするのが校閲記者の仕事です。
校閲記者が原稿を確認する際には、主に次の三つのことに留意しています。
②事実関係の確認
③言葉の使い方の検討
つまり、「きちんとした事実関係に基づいた記事を、きちんとした日本語で表現されていること」を確認するのが校閲記者の仕事です。
読者は新聞を信頼度の高い媒体として、ちゃんとした記事が載っているという前提で読んでくださっています。
以前に比べ、インターネットで調べられることが非常に増えており、それに伴って事実関係を確認することの比重が高まってきています。
主な直しのパターン
原稿を読んでいるといろいろな直しがありますが、直しにはいくつかのパターンがあります。
主なものとしては、①用語集に合わせる直し②誤変換、入力ミスの直し③文字遣い、文法の誤りの直し④慣用句などの誤りの直し⑤事実関係の誤りの直し――といったことが挙げられます。
①用語集に合わせるもの
2010年の常用漢字の改定で、「関わる」を「かかわる」と読む訓が認められました。基本的に新聞では常用漢字の範囲内で表記します。そのため、常用漢字が改定されるまでは「関わる」は「かかわる」と平仮名に直していましたが、今は「関わる」は使えるようになりました。ですから「関わらず」と漢字で書くことも当然あるのですが、毎日新聞用語集では「にも関わらず」の場合は「にもかかわらず」と平仮名で表記することに決めています。
辞書を見てみると、「にもかかわらず」の表記は「にも拘わらず」としているものがほとんどです。常用漢字では「拘わらず」の訓に「かかわらず」はないため、毎日新聞用語集では「にもかかわらず」と平仮名で表記することにしています。
この例のように、用語集に従って直しを入れる時でも機械的に直すのではなく、なぜ用語集がその表記を採用しているのかという理由をできるだけ考えるようにしています。それは、校閲の仕事には、他人の原稿に間違いを見つけてケチをつける仕事という部分があるからです。自分の誤りを指摘されて良い気分がする人はあまりいません。そういう時に、用語集がその表記を採用している理由を理解しておけば、なぜその直しが必要なのかをきちんと伝えることができ、出稿部とのコミュニケーションがスムーズになると考えています。
②誤変換
今はほとんどの原稿がパソコンで書かれるため、誤変換による間違いを直すことが多くなっています。音が同じ言葉を変換し損ねてしまうのだと思いますが、新聞の原稿を直す時に多くみられる間違いがあります。「発砲スチロール」(正しくは「発泡」)「車道を逆送」(正しくは「逆走」)といったものがそれです。
新聞記者は仕事柄、事件や裁判の原稿を書くことが多くあります。そのため、普通の人はあまり使わないけれども、事件や裁判などの記事ではよく使われる「発砲」「逆送」といった言葉を使う機会も多くあります。パソコンの変換ソフトは、よく使う単語を学習していくこともあり、このような誤変換を目にすることがよくあるのだと考えられます。このような誤変換の傾向を把握しておけば、間違いに気づきやすくなります。
(②に続く)【新野信】