くじの「トウセン番号」は「当選」「当籤」のどちらだと思うか伺いました。
目次
「当選」が6割占める
くじの「トウセン番号」、漢字で書くとどちら? |
当選番号 60.4% |
当籤番号 18% |
どちらでもよい 21.7% |
「当籤」は2割に満たず、代用表記とされる「当選」が6割と多数を占めました。
法律では「当せん」
辞書では「当籤」は一様に「くじに当たること」と説明されており、「当籤番号」で正しいことに文句はありません。しかし字が難しいため避けられているのでしょう、ほとんど見かけません。そこで「当選」と代用字を使うか、本来は「籤」だと意識して「当せん」と交ぜ書きにするか。
1956年の毎日新聞用語集は既に、当籤を「当選」もしくは「くじに当る」に書き換えるよう定めていました。この表記は半世紀以上の歴史があるわけです。一方で同年、当時の当用漢字のみで文章を書くために、国語審議会が「同音の漢字による書きかえ」という表を作成しています。「叡智→英知」「彎曲→湾曲」などが挙げられていますが、「当籤→当選」はありません。
宝くじを規制する法律は「当せん金付証票法」。「お年玉付郵便葉書等に関する法律」の中でも「当せん」表記になっています。宝くじ事業を行うみずほ銀行や郵便事業を行う日本郵便は、こうした法律に合わせてウェブサイトで「当せん」表記を使っているのでしょう。サッカーくじtotoを運営する日本スポーツ振興センターのサイトや、所管する文部科学省の文書の表記も「当せん金」などとなっています。公の立場では「当籤」の意識が守られているようです。では「当選」の代用表記は避けた方がいいのでしょうか。
くじ引き「当選」認める辞書も
新選国語辞典9版の「当選」の項目には「くじ・クイズなどに応募して、選にあたること。『公団住宅に―した』」とあります。集英社国語辞典3版でも「応募して抽選によって選ばれること。『クイズに―する』」と書かれ、「抽選・抽籤」の項を見ると、ずばり「くじびき」とありました。もはや「くじ」なら「籤」を使う、という話ではなくなっています。
これらの辞書では「くじの当選番号」表記は既に代用表記でなく、本来の表記と同等に扱われていると言えるでしょう。アンケートでの支持の多さを見ても、「当籤」と「当選」の境界は意識されなくなってきているようです。「当選番号」と書いて違和感を与えてしまう危険は小さいはずです。
「トウセン」重なる「選挙→くじ引き」
ただ新明解国語辞典7版では、代用字の「当選」を使うと、選挙の当選と「混同される恐れがある」と注意喚起していました。そんなことあるのか……と思っていたら、4月の相模原市議選挙では、最後の議席を争う2人の候補の得票数が同じになり、くじ引きで当選が決まりました。「当籤して当選」とでも言えるでしょうか。
珍しいケースですが、このフレーズで「当籤」を「当選」で代用したら「当選して当選」になってしまい、確かに混乱しそうですね。「トウセン番号」という場合には無理ですが、56年の毎日用語集にもある通り「くじに当たる」などと言い換えた方がよい場面もありそうです。
(2019年04月26日)
今年はお年玉付き年賀はがきの当選チャンスが2回。1度目は1月、そして次に当選番号が決まるのは4月20日……というように、毎日新聞などではくじ付きはがきや宝くじについて「当選」と表記します。
一方で、日経新聞の用語集のように「当選〔選挙や選考で選ばれる〕」「当せん〔くじに当たる〕」と使い分けている新聞社・通信社もあります。「当せん」表記は、本来「当籤」だと考えるけれども「籤」が常用漢字でないため平仮名表記にした結果です。
日本郵便のウェブサイトでも、「年賀葉書及び寄附金付お年玉付年賀切手の抽せん会を行い、当せん番号を決定しました」とあります。「当選」「抽選」をわざわざ平仮名との交ぜ書きにはしないでしょうから、やはり「漢字で書けば『当籤』『抽籤』」と捉えてのことでしょう。
明鏡国語辞典2版では「『当選』は、新聞が考案した代用表記」と注が付いています。「籤」という難しい漢字を使わずにすみ、評判が悪い交ぜ書きを避けられる代用字の「当選」ですが、違和感があるという方はどれぐらいいらっしゃるでしょうか。
(2019年04月08日)