助動詞「ない」+「そうだ」の形に、「さ」を入れるか否かを伺いました。
目次
大多数は「さ」入れを支持
10連休はホテルの予約が「取れそうにない」――言い換えるならどちら? |
取れなそうだ 26.1% |
取れなさそうだ 63.8% |
どちらも使う 10.1% |
「取れなさそうだ」が6割超と、4分の1強の「取れなそうだ」に大差を付けました。「どちらも使う」を含めると4分の3近くが「取れなさそうだ」を使うという結果。「さ」入れが広まっているようです。
形容詞は「なさそう」、助動詞は「~なそう」
回答から見られる解説では、形容詞「ない」は「なさそう」という形を取るとしつつ、「助動詞『ない』の場合は、『な』に直接付く」という明鏡国語辞典(2版)のコラムを引きました。語幹が1音節の「ない」「よい」は「なそう」「よそう」が使いづらいため「さ」を入れるようになったといいます(もっとも語幹が1音節でも「濃い」は違うようで「濃そう」の形でも使われます)。
例を挙げると、「間違いない」は「間違い(が)ない」なので、「ない」は形容詞。「そうだ」を付ければ「間違いなさそうだ」となります。一方、「間違えない」の場合は「間違え(る)+ない」ですから、「ない」は助動詞。「今日の解答者は最後まで間違えなそうだ」のような形をとることになります。
「容赦ない」と「容赦しない」であれば、「容赦(が)ない」と「容赦し+ない」という形です。形容詞の方は「彼は相手に対して容赦なさそうだ」、助動詞の方は「彼は相手に対して容赦しなそうだ」となります。
日常的には区別されない
品詞の説明は割愛しますが、文法にこだわってみると、「つまらない」は「つまらなそう」になり「面白くない」は「面白くなさそう」に、「おぼつかない」は「おぼつかなそう」で「頼りない」は「頼りなさそう」に、「食べそう」は「食べなそう」で「食べたそう」は「食べたくなさそう」に――と、考え始めると切りがないものの、面白いといえば面白いかもしれません。
しかし、上に見たような使い分けを常に気にしている人は多くはなかろうと思います。こうした「さ」の有無に関する寺崎智之さんの論文(新規サ抜き・サ入れ表現から見る誤用と正用の分析)では「助動詞のナイと形容詞のナイの区別など、日常会話では行わないのが普通である」と言います。実感に即していると思います。ちなみにこの論文は「帰りたさそう」や「寒さそう」のような「こんなものにも『さ』が入るの?」という例も集めていますが、これらはさすがにアンケートで伺うまでもなく、「さ」を入れない人が多いことでしょう。
慣用として「さ」入れは許容
上の例に戻ると、みなまとめて「さ」を入れることにして「間違えなさそう」「容赦しなさそう」と言う方が、形がそろってむしろすっきりしたと感じる可能性はあります。NHK放送文化研究所のウェブサイトでも「『降らなそうだ』? 『降らなさそうだ』?」として「さ」入れの話題を取り上げています。同サイトは「両方とも正しいと考えるのが現状に合っているように思います」と言い、使用実態を追認する形で「降らなさそう」を認めています。
今回のアンケートについても、「取れなそうだ」より「取れなさそうだ」が支持を集めたのは自然な感覚として受け止めるべきだろうと考えます。文法的には「取れなそう」の方が正しいということになりますが、現状では「取れなさそう」も十分通用しており、慣用として許容されていると言ってよいでしょう。
(2019年03月22日)
動詞に付くと、物事の見通しを示すことがある「そうだ」。予約が取れると見通せるなら「取れそうだ」で決まりなのですが、その打ち消しはどうでしょう。「取れそうにない」という言い方がある一方、日常的には「取れな(さ)そうだ」もよく使われます。
さて、この時「さ」は入れるべきか否か。これが単に「ない」であれば、「取れるホテルはなさそうだ」のように「さ」が入ります。形容詞の場合は「面白い→面白そう」のように語幹に直接「そう」が付き、「さ」は入らないのが普通ですが、「ない」と「よい」は例外。「なそう」「よそう」は音が不自然だからと言われています。
しかし、動詞に付く助動詞の場合はどうなるか。明鏡国語辞典(2版)は「ない」についてのコラムの中で「助動詞『ない』の場合は、『な』に直接付く」とし、「知らなそうだ」「済まなそうに謝る」といった例を挙げています。注釈して「『さ』を介した形でも用いられるが、慣用になじまない」とも言い、「さ」入りの形も用いられるものの、元々は「さ」は入らないと示唆しています。
ということで「取れなそうだ」の方がよさそうなのですが、毎日新聞の記事データベースでも「すまなさそう」は散見され、話はあまり簡単ではなさそうです。皆さんはどうお使いでしょうか。
(2019年03月04日)