同じ校閲記者から見ても「これはすごい」とうなってしまう仕事ぶりを紹介する「校閲グッジョブ!」。今回は、外国語の記事を読み込んで内容や訳の誤りを指摘した事例を紹介します。
目次
外国語の記事を丹念に読み込んで①
豪州が見積もる原潜導入費用、最大3680億豪 ㌦(約33兆円)のすごさについて、海外メディアの表現を引用したくだりです。
<校閲前>
豪州メディアは、100㌦紙幣を「5万㍍の高さに積み重ねる必要がある」と伝えた
<校閲後>
豪州メディアは、100㌦紙幣を「50万 ㍍の高さに積み重ねる必要がある」と伝えた
現地紙の報道で「500㌔の高さ」とあるのを発見。さらに紙幣の厚さを基に計算しなおしたうえで、メートルで書くなら「50万㍍」ではないかと指摘しました。
外国語の記事を丹念に読み込んで②
日系カナダ人で世界的建築家のレイモンド・モリヤマ氏(2023年9月に93歳で死去)について、幼少時の逸話を紹介するくだりです。
<校閲前>
ストーブ上のポットをひっくり返してしまう。熱湯を浴び、九死に一生を得た
例えばトロント大のサイトにはこんな説明があります。
“severely burned as a child when he accidentally upset a pot of stew”
これを踏まえ、<校閲前>の文章のどこが問題か分かりますか?
<校閲後>
ストーブ上のシチュー鍋をひっくり返す。大やけどを負い、九死に一生を得た
多数の英文サイトを参照して「ポットとは鍋と訳すべきで、中身は熱湯でなくシチューでは」と指摘。適切な表現に改められました。
知らない言語でも翻訳機能を駆使
元徴用工訴訟に関連する記事です。
<校閲前>
原告のヤン・ヨンスさんの娘ヤン・ヨンヒさんは……と述べた
校閲担当者は「親子の名前が似すぎているのでは?」という素朴な疑問を抱きました。
<校閲後>
原告のヤン・ヨンスさんの娘キム・ジョンオクさんは……と述べた
翻訳機能を使いながら韓国語のニュースで同じ発言を引用した記事を探し出し、娘の名前が違うのではと指摘しました。
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