読めますか? テーマは〈強さ〉です。
目次
盤石
ばんじゃく
(正解率 95%)「ばんせき」ともいう。安定していて動かないこと。スポーツ記事で、強さが際立って脅かすものがないときに頻出する。「磐石」とも書くが磐は常用漢字ではない。
(2012年07月23日)
選択肢と回答割合
ばんこく | 1% |
ばんしゃく | 3% |
ばんじゃく | 95% |
超弩級
ちょうどきゅう
(正解率 90%)同類のものに比べ、並外れて強大なこと。1906年建造の英国の戦艦ドレッドノート級の戦艦を当て字で「弩級艦」と書いたが、それを超える規模の艦を指すようになった。ドレッドノートとは「何ものも恐れない」意味。現在「超ド級」の表記が多い。元の意味を知るとこの方がふさわしいといえる。
(2012年07月24日)
選択肢と回答割合
ちょういっきゅう | 3% |
ちょうごうきゅう | 7% |
ちょうどきゅう | 90% |
地力に勝る
じりきにまさる
(正解率 75%)地力とは本来持っている実力。「地力に勝る」は「実力が上」ということ。「ちりょく」と読むと土地の生産力の意味、「自力(じりき)」は自分だけの力のことで、それぞれ別語。「自力で勝つ」ならありえるが「自力に勝る」と書くと意味不明なので注意したい。
(2012年07月25日)
選択肢と回答割合
じりきにまさる | 75% |
じりょくにまさる | 13% |
ちりきにまさる | 12% |
強力無双
ごうりきむそう
(正解率 81%)「剛力無双」とも書く。並ぶものがないほど力が強いこと。強力(ごうりき)は登山者の荷物など物資を運ぶ人のことも指す。2012年が生誕100年の新田次郎は「強力伝」で直木賞を受けた。
(2012年07月26日)
選択肢と回答割合
きょうりきむそう | 13% |
きょうりょくむそう | 6% |
ごうりきむそう | 81% |
抜山蓋世
ばつざんがいせい
(正解率 83%)「力は山を抜き気は世を蓋(おお)う」ともいう。力は山を引き抜くほど強く、気力は世を覆うほど盛んという意味。「史記」に出てくる中国の武将、項羽がうたった詩から。劉邦の軍に包囲され四面楚歌(そか)の状況でも壮大な比喩だ。
(2012年07月27日)
選択肢と回答割合
ばつざんがいせい | 83% |
ばっさんきょせい | 16% |
ぬきやまふたよ | 2% |
◇結果とテーマの解説
(2012年08月05日)
この週は「強さ」がテーマでした。
全体的に正解率は高めで、最も低かった「地力に勝る」も75%でした。ただし、回答者はこれまで例から推測すると、かなり漢字に強い人が多いと思われます。それを勘案すると、意外に低い率といってもよいでしょう。
「地力に勝る」は新聞のスポーツ記事で多用される表現です。「前半は互角の戦いだったが、後半は地力に勝る○○に押し切られた」など。しかし、日常会話ではもちろん、小説でもまず出てきません。このギャップが正解率に表れているように思います。
なお「自力に勝る」という間違いは、地方版でけっこう出てきます。支局の若い記者が書いているものと思われますが、「自力」と「地力」の違いをのみこめないまま言葉遣いだけ先輩記者の文章をまねているのでしょうか。
「盤石」も日常生活で使われない割に新聞の見出しによく出る言葉です。が、これは回答者には常識的だったようで、「ばんしゃく」という濁点の有無に引っかかる人もほとんどいませんでした。調べるまで知りませんでしたが、辞書では「ばんせき」とも読むとのことなので3択の選択肢にはしませんでした。その読みの場合「碁盤と碁石」という意味もあるようです。
「超弩級」。若い人には「超ド級」の表記の方がおなじみでしょう。しかしそれが戦艦からきていると知っている若者は、さほどいないのではないでしょうか。ちなみに「戦艦」はいまどこの国も配備していないそうですね。現役艦として「戦艦」と原稿にあったら「軍艦」などに直さなければなりません。
「強力無双」。「剛力」とも書きますが、パソコンの検索では「ご」と入力しただけで予測候補に「剛力彩芽」が出てきます。いまテレビで見ない日がない超売れっ子。その人気の秘密として「剛力」という力強い名字と「彩芽」の女の子らしい名前とのギャップがインパクトになっているという説を読んだことがあります。本名で、名前の由来は本人も知らないそうですが、山の「強力」に関係あるかもと語っていたそうです。
余談ついでですが、彼女の所属するオスカープロモーションには「武井咲」「忽那汐里」というやはり超売れっ子がいます。いずれも難読ですよね。うかつに「さき」とか「こつな」とか言うと若い人にばかにされるので気をつけなければ。
「抜山蓋世」。項羽の詩からきた四字熟語です。後は「時利あらず」「虞や虞や若(なんじ)を奈何(いかん)せん」との嘆きになります。有名ではありますが、漢文を昔ほど教えなくなった現在、聞いたことがない人も多くなっているのでしょう。83%。微妙な数です。蓋は常用漢字になりましたが、「ふた」の訓はともかく音読みはまだまだ読み仮名が必要かもしれません。