オリンピックの熱気の余韻が残るロンドンで開かれた、障害者スポーツの祭典パラリンピック。オリンピックに負けない熱戦で、私たちに感動を呼び起こしている。さて、こうした感動に水を差すのが禁止薬物の使用、いわゆるドーピングだ。ロンドン五輪では早くも女子砲丸投げでベラルーシの選手が金メダルを剥奪されたが、大会期間中、紙面づくりで悩まされたのが、このドーピングによる記録の変更だ。
ある日、「男子1600?リレーはお家芸の米国が3連覇を狙う」という原稿について「前回北京大会(2008年)の記事では『7連覇した』とあるが」との問い合わせがあった。確かに当時はそうだったが、調べてみると、米国は今年7月、ドーピングのためシドニー五輪(2000年)での金メダルが剥奪され、連覇が途切れていたのだ。ここは「3連覇」で正しかった。
それとは別の日、「今大会参加204カ国・地域のうち85カ国・地域がメダルを獲得。その数は北京五輪の87カ国・地域には届かなかったが、バーレーン、ボツワナ、ガボン、キプロス、モンテネグロ、グレナダ、グアテマラの7カ国が史上初めてのメダリスト」という原稿について、北京大会当時の紙面で「国別獲得メダル表」を確認したところ、確かにメダルを獲得した国・地域は「87」。だがよく見ると「バーレーン=金1銀0銅0」とある。「あれ? バーレーンは今回が初のメダルじゃないの?」
実は、バーレーンも北京大会後、ドーピングで金メダルを剥奪されており、「ロンドン五輪で初のメダル獲得」ということになる。その代わり、「北京五輪で87カ国・地域がメダル獲得」の記述は、バーレーンの分を減らして「86」に修正が必要になった。
先日、自転車ロードレースの「ツール・ド・フランス」を7連覇したアームストロング氏がドーピングによりタイトル剥奪と自転車競技からの永久追放処分を受けた。スポーツファンとしてこうした悲しい事件が二度と起こらないことを祈るが、校閲記者としては今後もドーピングによる記録の変動には目配りを続けたい。
【坂上亘】