読めますか? テーマは〈国語調査〉です。
向津具
答え
むかつく
(正解率 32%)山口県長門(ながと)市の地名。向津具半島には奈良時代に中国から楊貴妃(ようきひ)が流れ着いたという伝説がある。2011年度の文化庁「国語に関する世論調査」では腹が立つことを「むかつく」と言う人が過半数となったが、それとは全く関係ない。地名の由来としては「向こうの国」を意味する古語からという説がある。
(2012年10月29日)
選択肢と回答割合
こうしんぐ |
23% |
むかつく |
32% |
むつぐ |
46% |
真逆
答え
まさか
(正解率 84%)よもや、万一。「真逆」は当て字らしく、現在は平仮名の「まさか」が一般的。近年「正反対」の意味で「まぎゃく」とも読む。2011年度の文化庁「国語に関する世論調査」では「真逆(まぎゃく)」というのは22.1%で、若い人ほど多かった。「まぎゃく」は新明解、岩波など採用する国語辞典もあるが、あくまで俗語。
(2012年10月30日)
選択肢と回答割合
しんぎゃく |
14% |
まさか |
84% |
まじぎれ |
3% |
割愛
答え
かつあい
(正解率 97%)惜しいと思うものを省略すること。2011年度の文化庁「国語に関する世論調査」で、「不必要なものを切り捨てる」意味で使うと答えた人が65.1%。本来の意味で理解している人は17.6%だった。「惜しいと思うものを手放すこと」が「本来」とされているが、昔は「愛着の気持ちを断ち切ること」を意味する仏教語だったらしい。
(2012年10月31日)
選択肢と回答割合
凡例
答え
はんれい
(正解率 86%)辞書や編集した本の使い方などを説明したもの。2011年度の文化庁「国語に関する世論調査」では「はんれい」と読んだ人が61.3% 、「ぼんれい」は28.9%だった。
(2012年11月01日)
選択肢と回答割合
はんれい |
86% |
ばんれい |
2% |
ぼんれい |
12% |
若気る
答え
にやける
(正解率 54%)なよなよしていること。また、うわついていること。2011年度の文化庁「国語に関する世論調査」では、この意味で使う人は14.7%、「薄笑いを浮かべている」意味と答えたのは76.5%だった。もとは「にゃける」と発音していたらしいが、明治中ごろ「にやける」と変わったという。
(2012年11月02日)
選択肢と回答割合
にやける |
54% |
はじける |
15% |
わかぶる |
30% |
◇結果とテーマの解説
(2012年11月11日)
この週のテーマは「国語調査」。9月に発表された文化庁の2011年「国語に関する世論調査」にちなんだ出題です。
といいつつ、いきなり「向津具」という地名から入り「調査では腹が立つことを『むかつく』と言う人が過半数となったが、それとは全く関係ない」と書いてしまいました。毎日新聞の社会面でも月曜に「週刊漢字・読めますか?」という題で同じく漢字クイズを出しているのですが、それを読んでくださった方のブログで「おい、関係ないんかい!」というナイスな突っ込みをいただきました。
直前にこうも書かれています。「『向津具半島には奈良時代に中国から楊貴妃が流れ着いたという伝説がある』だと。実際見たら、えらいブスだったんでむかついた、というオチじゃないやろな」。いや、真面目に応えるのもなんですが、楊貴妃のいたころ「腹が立つ」意味で「むかつく」が使われていたとは思えません。ただし江戸時代には既にそういう用例があるようです。
というわけで、文化庁は毎年、変わりつつある日本語の実態を探るために世論調査を行っています。結果の概要は文化庁のホームページで見ることができます。ちなみに「国語に関する世論調査」の「世論調査」は「よろんちょうさ」と読みます。この言葉は「せろん」とも読むので、文化庁調査の場合決めているかどうか電話で確認しました。
「真逆」はクイズとしては「まぎゃく」以外の選択肢で読みを尋ねたものですが、国語調査は「正反対」のことを「真逆(まぎゃく)」と言うかどうかが眼目です。この問題は当ブログでも「
『真逆』…使いますか?」という題で取り上げました。
「割愛」も国語調査では読みではなく、使い方を聞いています。「例文:説明は割愛した」と示したうえで「不必要なものを切り捨てる」「惜しいと思うものを手放す」の選択肢を選ばせるもの。本来と違う使い方である前者が圧倒的に多いという結果が出ています。しかしこれは選択肢の書き方がいかがなものかと思います。「説明は手放した」とは言いませんから、例文にそぐわないのです。「惜しいと思いつつ省略する」などの選択肢にすれば、違った結果になったのではないでしょうか。
「凡例」は文化庁ホームページの国語調査の「概要」には載っていませんが、漢字の読みを問うた5語のうちの1語です。それによると「はんれい」61.3%、「ぼんれい」 28.9%でしたから、この漢字クイズ回答者のレベルがうかがえますね。
最後の「若気る」は国語調査では平仮名の「にやける」で意味を聞いています。出題者はこれが本来「なよなよしたこと」とは知りませんでした。最近読んだ京極夏彦さんの「嗤う伊右衛門」でも単に笑う意味で「若気る」が使われていました。これは誤用なのか、既に意味が変化した語と捉えるべきなのか、難しいところです。辞書によると大もとは「男色の対象の少年」を意味したようです。さすがに文化庁はそう書いていませんが。
それはともかく、「若気る」の漢字はかなり難読のはずが、その割に54%とは悪くないと思いました。先に引いたブログでも「ふっふっふ、なめんなよ、毎日新聞さんよ」と書かれてしまいました。いやあ、おみそれしました。でもありがとうございます。