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目次
御統
みすまる
(正解率 34%)古代の装身具。多くの玉を糸で通して輪にしたもの。アマテラスオオミカミとスサノオのくだりに出てくる。「すまる」は「すばる」(まとまる)の転。「すばる」は冬に見られる星団の昴(プレアデスの和名)をも指す。まとめる意味の「統べる」は常用漢字表にもある。
(2012年11月19日)
選択肢と回答割合
おんすめらぎ | 59% |
ぎょする | 6% |
みすまる | 34% |
浅草「鷲神社」
おおとりじんじゃ
(正解率 71%)東京都台東区の神社。死後に白鳥になったという日本武尊(やまとたけるのみこと)などをまつる。11月のとりの市が有名で、縁起物の熊手を買う人々でにぎわう。11月20日は二の酉(とり)。なお、とりの市が立つ神社は全国的にあるが、表記は堺市の大鳥神社など、読みも足立区島根の「鷲(わし)神社」などとさまざまだ。
(2012年11月20日)
選択肢と回答割合
おおとりじんじゃ | 71% |
さぎじんじゃ | 12% |
わしじんじゃ | 17% |
四日市市釆女町
よっかいちしうねめちょう
(正解率 74%)三重県。古事記ではヤマトタケルが東征の帰途に疲れて杖をついて通ったとされる杖衝坂(つえつきざか)がある。「うねめ」は通常「采女」(采は採のつくり)と書くが、この地名は「釆」(ノの下に米。釈などの部首「のごめへん」で使われる)という酷似した別の漢字が使われている。
(2012年11月21日)
選択肢と回答割合
よっかいちしうねめちょう | 74% |
よっかいちしこごめちょう | 15% |
よっかいちしのごめちょう | 11% |
神在祭
かみありさい
(正解率 49%)島根県の出雲大社で11月24日(2012年)から行われる祭り。陰暦10月は全国の神々が出雲に行くので「神無月」といわれるが、出雲では「神在(かみあり)月」という。もっとも神無月の語源は他にも諸説あり定かでない。
(2012年11月22日)
選択肢と回答割合
かみありさい | 49% |
かんなびさい | 41% |
しんざいさい | 9% |
◇結果とテーマの解説
(2012年12月02日)
今年は古事記の関連本コーナーを設ける書店が多かったようです。原文で読んでみたいが難しすぎるという向きにお薦めするのが、こうの史代さんの「ぼおるぺん古事記」(平凡社)。親しみやすい漫画で原文を味わえます。しかも単なる絵解きにならず独自の世界を築いているところがさすが。「太陽の地図帖 出雲」(平凡社)所収のスサノオの話「おとうと」もじんわりと心にしみる名短編です。
「御統」が今回正解率の最も低かった語。某アニメの主人公の名になっていますが、まあ知られていないでしょう。古事記で「美須麻流」などと書かれています。玉を結んだ装身具を「みすまる」と言ったのはおそらく漢字伝来以前からある和語で「御統」は後で漢字をあてたのだろうことがうかがえます。それにしても「統」は「漢字ときあかし辞典」(研究社)によれば、本来は「巻き取られた長い一本の糸」を表したそうですので、ぴったりです。同辞典には「『伝統』などでは“一続きの長いつながり”を表す。“まとめる”という仕事は、根気がなければできないもののようである」とあります。昨今の政党がなかなか一つにまとまらないのは、きっと根気が足りないせいなのでしょう。
「鷲神社」。以前「鷲」に「わし」というルビが振ってあったのが危うく紙面化されそうになったことがあります。しかし浅草の有名な神社は「おおとり」ですが、「わし」と素直に読むところもあるのがややこしいですね。「おおとり」は大きな鳥の総称で、白鳥をも鶴をもワシをも表したようです。
「四日市市釆女町」。きわめて似ていますが「うねめ」は普通「采女」と書きます。どうしてこの地名は「采女」じゃないのか分かりませんが、こういう紛らわしい変換候補がパソコン辞書に登録されているから困ったものです。毎日新聞でも実際、「采女」で何度か紙面化されています。
似た例に「祇園」があります。普通はつくりが「氏」ですが、川崎市中原区木月祗園町の場合は「祗」と「氏」の下に「一」が付きます。これが変換候補にあるために、しばしばそれ以外の祇園まで「祗園」と誤記されます。老眼気味の目には見分けがつきにくい、校閲泣かせのそっくりさんです。
「神在祭」。陰暦10月が「神が不在になるから神無月」という話を聞いたことがあると思いますが、眉唾らしいことはご存じでしたか? 出題者は高島俊男さんの「お言葉ですが…⑦漢字語源の筋ちがい」(文春文庫)で知りました。「神無月」という漢字をあててしまったからそういうもっともらしい説が流布してしまったのですが、「な」は「無」ではなく「の」、つまり「神の月」を表すという説の方が有力のようです。漢字伝来以前からある和語の場合、漢字とは切り離して語源を考えなければなりません。
和語を探求しようと思ったら中西進さんの「ひらがなでよめばわかる日本語」(新潮文庫)が入門編として最適です。古事記の引用もふんだんにあり、古代の日本語を通して日本人の考え方に触れることができます。漢字にはおそるべき知恵が込められていますが、和語もくめども尽きぬ魅力がありますね。