「初老」という言葉でどの程度の年齢をイメージするか伺いました。
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ほぼ三分も最多は60代
「初老ジャパン」の活躍が印象に残った2024年――ところで「初老」といえば何歳ぐらい? |
40代 29.8% |
50代 33.2% |
60代 34.5% |
70代 2.5% |
パリ・オリンピックで、平均年齢40歳強という総合馬術団体の日本代表「初老ジャパン」がメダルを獲得。初老のイメージが変わったか?と思いましたが、結果は40代、50代、60代でほぼ三分されたものの、最多は前回(2018年)伺ったときと同様、60代が最多でした。
「老境」「高齢期」の入り口
結果を前回と比較すると、以下の通りです。
・40代 25.5% → 29.8%
・50代 30.8% → 33.2%
・60代 38.8% → 34.5%
・70代 4.8% → 2.5%
見たところ、大して変わらなかったという評価になります。40代が若干増え、60代が若干減りましたが、有意差と言えるかは微妙です。
国語辞典の「初老」の項目は、手近な辞書ではすべてが「四〇歳の異称」(大辞林4版)のような説明を載せています。現在ではあまり言わないことを示すために「もと、40歳の異称」(大辞泉2版)のように説明するものもあります。
一方で現在どのように使うかについては、「老境に入りかけた年ごろ」(広辞苑7版)、「中年期を過ぎて、高齢期にさしかかる年ごろ」(明鏡国語辞典3版)のように、数字よりも漠然としたイメージで説明されます。数字を出している場合は「現在では六〇歳前後と意識される」(明鏡国語辞典3版)、「現在は普通に六十歳前後を指す」(新明解国語辞典8版)、「現在では六〇歳前後の人に使うことが多い」(現代国語例解辞典5版)と、60歳を目安とするものが目立ちます。
もっとも、三省堂国語辞典のように、2014年の7版では「おもに六十代」、6版(2008年)では「おもに五十代」と年齢を出していたものが、最新版(2022年発刊の8版)では年齢を外したものもあります。「老年に近づいて、からだがおとろえかける時期」という説明自体は変わっていませんが、数字として一概に言えないということになったのでしょうか。
放文研調査では「80歳まで初老」も1割
NHK放送文化研究所の2016年度(2017年3月実施)「日本語のゆれに関する調査」では、「女子」「男子」「おじさん」「おばさん」などの「想定年齢」について質問しており、その中に「初老」は「何歳から」「何歳まで」という質問が含まれています。数字の大きいところだけ抜き出すと、年齢が高いことにちょっと驚きます。
「初老」という言い方は、何歳ぐらいからの人を指すことばだと思いますか。
・60歳ぐらいから 31.7%
・65歳ぐらいから 25.2%
・70歳ぐらいから 20.6%「初老」という言い方は、何歳ぐらいまでの人を指すことばだと思いますか。
・65歳ぐらいまで 17.9%
・70歳ぐらいまで 33.4%
・75歳ぐらいまで 21/9%
・80歳ぐらいまで 9.6%
なんと2割強は75歳まで、1割は80歳まで「初老」だと! 85歳ぐらいまで(2.2%)も含めると、3分の1は少なくとも75歳までは「初老」だと考えていることになります。40歳ぐらいからと答えた人はわずか2.2%。今回解説を書いている筆者は50代前半ですが、目は見えないし白髪は増えるし物覚えは悪くなるしとはっきり老化を自覚しており、身体的にも精神的にも自らが「初老」であることに全く違和感はありません。皆さんお元気なのですね……。
数字に縛られる必要はなさそう
「初老ジャパン」という愛称は、辞書の説明にあるような定義を利用して注目度を高めようというものだったはずですが、大会でも好結果を上げたのは見事と言うほかありません。ユーキャン新語・流行後大賞のトップテンにも入り、2024年は充実した年だったことだろうと思います。「初老」の地位を向上させたとも言えそうです。
アンケートの結果として最多だった「60歳」が、一部の辞書でも目安として記載されるのは、多くの職場で定年退職という節目の年齢だということで、一般に意識されやすいためだと考えます。もっとも、三省堂国語辞典が年齢の記載をやめたように、現在では必ずしも数字に縛られる必要はないというのが正しいという印象も持ちました。心身に変化のきざす年ごろとして、自身と向き合う中で意識すべき言葉かもしれません
(2024年12月30日)
ユーキャン新語・流行語大賞で、パリ・オリンピックの総合馬術団体メンバーの愛称「初老ジャパン」がトップテンに入りました。メダル獲得につながった実力が名前の話題性をいっそう膨らませたことは疑いありませんが、「初老」という言葉がこのように目立ったのは珍しいことと思います。
メンバーの平均年齢はパリ五輪当時で「41.5歳」。「これで初老?」と思った人もいそうですが、広辞苑(7版)は「初老」の二つ目の意味を「四〇歳の異称」としており、もとは40歳になれば「初老」と言われたと見られます。とはいえ広辞苑も、第1義としては「老境に入りかけた年ごろ」を挙げており、こちらの意味なら人によって受け止め方は分かれそうです。
今回の質問は2018年に一度伺ったことがあるものですが、当時の回答は「60代」が最多で38.8%、「40代」は25.5%でした。「初老ジャパン」の活躍で、「初老」の受け止め方も40代が主流になるかも? 皆さんはどれを選んだでしょうか。
(2024年12月16日)