読めますか? テーマは〈回顧〉です。
目次
疾う
答え
とう
(正解率 48%)「とうの昔」の「とう」。
昭和は既に遠い昔だ。とはいえ「遠の昔」は誤字。「とう」は「疾(と)く」(早くという意味)の音変化だからだ。「とお」と書くのも不適切。(2013年04月30日)
選択肢と回答割合
うしなう | 10% |
とう | 48% |
わずらう | 42% |
駒隙
答え
くげき
(正解率 58%)年月が過ぎるのが早いたとえ。馬が走っていくのが隙間(すきま)からちらっと見えるほどの短い時間ということ。「白駒(はっく)隙(げき)を過ぐ」などともいう。「荘子」から。
(2013年05月01日)
選択肢と回答割合
こげき | 13% |
こますき | 29% |
くげき | 58% |
「三省」する
答え
さんせい
(正解率 75%)何度も反省すること。「論語」から。三省堂の社名の由来である。昭和の暗部は三省しなければなるまい。なお毎日新聞のサイト、毎日jpで「再思三省」などの題で校閲発の連載を始めました。紙面での失敗も含め自らを省みて明日に生かす試みです。
(2013年05月02日)
選択肢と回答割合
さんしょう | 19% |
さんせい | 75% |
みかえり | 6% |
◇結果とテーマの解説
(2013年05月12日)
この週は大型連休のため3回でした。テーマは「回顧」。
昭和の日を意識したものですが、憲法改正論議がかまびすしいなか、憲法記念日に比べいささか影が薄い休日でしたね。本当はこんな時だからこそ、昭和の功罪をきっちりかえりみなければならないと思うのですが。
「疾う」は毎日新聞紙上の「週刊漢字」では「疾うの昔」で出題しました。これで3択にすると簡単すぎるので「の昔」を外しましたが、難しくなりすぎたでしょうか。でも半数近く読めているのはさすがといえるかもしれません。
「駒」「隙」はともに2010年に追加された常用漢字です。ただし「隙」は「ゲキ」「すき」の音訓ともに常用漢字表に掲げられたのですが、「駒」は「こま」の訓のみです。「駒」の音読み使用例が少なかったからでしょう。しかし競馬の記事では「産駒」は頻出します。毎日新聞としては「産駒」はルビなしで使えるがそれ以外のク、例えば「白駒」は「はっく」と振り仮名をつけると定めています。隙も読み仮名を付けなければなりません。
「三省」は、手前みそですが、毎日新聞デジタルに「校閲発・再思三省」と題する連載を始めたこともあっての出題です。再思三省という四字熟語は、見出し語としては国語辞典でなかなか見つかりませんが、太宰治の1943年のエッセー「金銭の話」に使用例があります。時局に合わせてか「お国の役に立ちたい」と書きつつ貯金ができないことを嘆くばかりで「やりくりが上手でないのであろう。再思三省すべきであろう」と反省します。戦争のさなかの文章なのに、太宰治らしいどこかユーモラスな自省ぶりが楽しめます。
三省といえば、辞書で有名な「三省堂」を連想される方も多いでしょう。出典は「論語」の「われ日にわが身を三省す」。「三省堂国語辞典」は「辞書を編む」(光文社新書)で 裏話を記しています。いうまでもなく映画「舟を編む」に合わせていますね。また、辞書大好き芸人のサンキュータツオさんが書いた「学校では教えてくれない!国語辞典の遊び方」(角川学芸出版)は、なんと、いろんな辞書を擬人化して絵入りで説明しています。「新明解くん」(新明解国語辞典)は「地方出身の野生派」として、「都会派インテリメガネ君」の「岩国(いわこく)くん」(岩波国語辞典)とライバルだけど、ヒロインと最終的に結ばれるのは「新明解くん」――と筆者は妄想します。ヒロインって誰だよ(笑い)。
、編集委員の飯間浩明さんがつい先日もNHKBSプレミアムの「ケンボー先生と山田先生」というドキュメンタリーで、同じ三省堂の辞書に携わりつつ対立していく2人の編者のドラマが描かれました。事実は小説より奇なり。「舟を編む」はすばらしい小説と思いますが、辞書の歴史を回顧すると、それ以上に面白いかもしれません。