読めますか? テーマは〈風〉です。
金風
答え
きんぷう
(正解率 50%)秋の風のこと。中国の五行説で、秋を金に当てることから。季語にもなっているが、歳時記に取られる句は少ない。日本人の感覚に合わないせいだろうか。
(2013年08月26日)
選択肢と回答割合
かねかぜ |
5% |
きんぷう |
50% |
こんぷう |
45% |
真風
答え
まじ
(正解率 30%)「まぜ」「ませ」ともいう。主に西日本で使われた語で、おおむね南または南西の風を指すが、各地で微妙に指す方角が変わってくる。なお「まかぜ」は「魔風」と書き「悪魔が吹かせる風」の意。
(2013年08月27日)
選択肢と回答割合
凱風
答え
がいふう
(正解率 85%)穏やかな南風のこと。凱は「凱歌」「凱旋」など勇ましい語が多いが、「やわらぐ」意もある。葛飾北斎による富嶽三十六景の一つで赤富士が描かれた「凱風快晴」は有名。
(2013年08月28日)
選択肢と回答割合
風草
答え
かぜくさ
(正解率 33%)イネ科の雑草。道端などで風にそよぎ、秋に紫色の小花を咲かせる。風知草(ふうちそう、かぜしりぐさ)ともいわれたが、中国の「知風草」との混同とされる。さらに、園芸種のイネ科、ウラハグサ(裏葉草)の別名も風知草であり、ややこしい。昔、知風草の生育状況で台風を予知したというが、今でいうどの草に当たるかは不明。
(2013年08月29日)
選択肢と回答割合
かざくさ |
40% |
かぜくさ |
33% |
ふうそう |
27% |
二百十日
答え
にひゃくとおか
(正解率 71%)立春から210日目のこと。9月1日ごろ。暦の雑節(ざっせつ)で、昔から台風の来ることが多い厄日とされていた。夏目漱石の小説の題名にもなっている。なお常用漢字表では「十」は「とう」でなく「とお」が正しい。
(2013年08月30日)
選択肢と回答割合
にひゃくとうか |
22% |
にひゃくとおか |
71% |
にもとおか |
7% |
◇結果とテーマの解説
(2013年09月08日)
この週は「風」がテーマでした。挙げた語には直接関係しませんが、映画「風立ちぬ」がきっかけです。
宮崎駿監督の映画の題名は「風の谷のナウシカ」「紅の豚」など全て「の」という助詞で結ばれている、というのは一部でいわれていた話でしたが、今回の映画はその通例を破った最初で最後の作品となりました。監督本人がどれだけ意識していたかは別として、今にして思えばタイトルからも何らかの覚悟が感じられます。そういえば「ジブリ」とは「サハラ砂漠に吹く熱風」を意味するそうですね。
さて、今回「真風」が最も低い正解率となりました。「まじ」が正解なんてマジかよ?と思われたかもしれません。風の名称については、ちくま文庫「柳田國男全集20」所収の「風位考」に詳しい論考があります。マは「風の中でのいちばん重要な、始終問題になっている風という意味に、マの字を冠したか」、ジはヤマセなどと同じく「風のこと」と推測されます。「マジ」の方角としては南風を意味する例が多く、例外的に西南風または西風などということですが、さらに「驚くのは」香川県の一地方では、四隅の風をともにマジといっていること、と記されます。つまり方角はさほど問題ではなかったのかもしれません。それはともかく、「まかぜ」を選んだ人は、宝塚の真風涼帆(まかぜ・すずほ)さんの名を意識されたのでしょうか。だとしたら、違う選択肢を設定した方がよかったかもしれません。
「金風」はちょうど50%。秋の季語ですが、歳時記を見ると「秋風」の項に付随して少しだけ句を載せるか、または一句も載せないものもあります。金色はわび・さびを旨とする俳人の趣味に合わないのかもしれません。では秋風に色をつけるとすると何色がふさわしいでしょう。「白秋」という言葉もあるように、「白」でしょうか。毎日新聞「季語刻々」(2013年9月1日付)では「青みたる二百十日の歯磨き粉 浦川聡子」という句について「二百十日の風だと青が合うな」と作者は思ったのだろうと、坪内稔典さんは評されています。
その「二百十日」、発音上はほとんど区別できない「にひゃくとうか」をひっかけの選択肢にしました。出題者としては71%は上出来だと思います。
「凱風」が最も正解率が高くなったのは、「凱旋」「凱歌」が頻出するので、常用漢字でないにもかかわらず凱の字がよく知られているせいでしょう。しかし「凱らぐ」となると相当難問です。ツイッターで、漢検か何かの問題で出てきて分からなかったという報告がありました。正解「やわらぐ」。では元富士銀行頭取の故・岩佐「凱実」さんは? 「よしざね」。全く、漢字の読みは風のように気まぐれです。